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電情日記

ものをつくる

安川 雪子

電気電子情報工学科の安川です.

最近 ものをつくること について考える機会がありました.

 

ご存知の方も多いかもしれませんが

 

自然の中から自分たちで材料を調達し,丸木舟をつくる.

丸木舟をつくるのに必要な道具や,材料を調達するのに必要な道具もつくる.

できあがった丸木舟でインドネシアの島から黒潮に乗って日本まで旅をする.

 

という冒険をした方がいます.

 

舟をつくるために木を切るのですが,木を切るには斧が必要です.その斧をつくるために海岸で磁石を使って地道に120 kgもの砂鉄を集めたそうです.砂鉄を木炭と一緒に焼いて還元して鋼にします.そのため木炭が必要です.120 kgの砂鉄を鋼にするには300 kgの木炭が必要で,300 kgの木炭をつくるには3 tの木材(炭材)が必要です.そこで炭材から木炭もつくったそうです.その後,古くから伝わる「たたら製鉄」で砂鉄と木炭から鋼をつくり,その鋼を鍛えてやっと斧の刃物部分ができました.5 kgの鉄器(斧などの刃物部分)を得るためにこれだけの原料と手間がかかっているのです.さて,この手づくりの斧を使い,チェーンソーを使えば15分で伐採できる木を3時間以上かけて伐採し,丸木舟の素材を手に入れました…そこから先も万事このような過程を経て,丸木舟をつくっていったそうです.

できあがった丸木舟は,大昔に人類が海上を航海するのに使ったのと同じように,エンジン,モーター,コンパス,GPSもない舟です.海図も使わず島影や星と風力だけを頼りにインドネシアの島から4700 km離れた日本を目指して出航しました...しかし出航当日の航海は,なんと8 km.気が遠くなるような話です.

 

現代の私たちはとても忙しく,せっかちです.

 

効率よく時間を使うには?

時間がない!

 

誰もが日常的に考えることでしょう.なるべく時間をかけないように思案し,時間をかけたら損をした気分になり,時間短縮のためにお金と知恵を使い,日々忙しく暮らしている現代人は,時間がかかることが苦手な人が多いのではないでしょうか.

このドキュメンタリー映画を見た時,現代日本人でこのような「古代人的な」時間感覚を持つ人がいることに驚きました.そして現代社会において,このように時間と手間をかけて全てを自分たちでつくりあげることの贅沢さを感じました.

 

さて,私の研究室では「材料」を研究しています.

材料を自分たちで作り,作った材料の性質を調べて考察し,新しい現象や新しい高機能材料を探索することを目的としています.ゼロから新しい材料をつくり出し,それを社会で実用できるような開発に結びつけることを目指す研究室です.これは,かたちは違いますが上記で紹介した冒険と似ていると思いました.

最近は材料研究の分野にも効率化の波が押し寄せているのを感じます.材料を作製するグループ,その材料の特性を測定するグループ,特性をシミュレーションや理論解析するグループなどに分かれて分業化し,効率よく研究を進めるチームが多くなりました.それぞれが自分たちの得意分野で貢献し,目的に向かって効率よく研究を推進するのはとても大切で,実際,素晴らしい業績をあげています.しかし長いこと材料研究をしてきた私は,材料作製から特性測定,解析までを一貫して研究することによって,初めて見えてくるものもあるということを,経験を通して知っています.

上記の冒険には実際の航海だけでなく,丸木舟をつくる過程や道具をつくる過程でも多くの若者がかかわったそうです.若者たちのその後の人生に,その経験は色濃く残ることと思います.丸木舟型の材料研究をしている私の研究室でも,私も学生も一緒になって「自分たちでゼロから材料をつくり上げ,その材料の特性を解明し,さらに特性をより良くしようと試行錯誤することの面白さ」を存分に冒険したいと思います.

 

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