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電情日記

文献調査について

宮田 高道

宮田です.早いもので千葉工大に着任してからもう4年になろうとしています.現在の電気電子情報工学科では研究室配属は3年生の後期から行われることになっており,私の研究室も今年の9月に新たに12名の3年生を研究室に迎えることになりました.

研究室に配属された3年生は,各々の指導教員が開講する科目「ゼミナール1」を受講することになっています.公開されているシラバスの当該科目の概要には,

配属された研究室に関連する研究分野の現状と動向を国内外の文献により把握し、課題を発掘する能力を身に付ける。これにより、研究分野に関連した基礎的・専門的知識を深め、ゼミナール2及び卒業研究のために必要な知識を習得する

と書かれています.概要のなかの「研究分野の現状と動向を国内外の文献により把握」することは,一般に文献調査とよばれています.今日は,この「文献調査」が研究をすすめるうえで非常に重要なプロセスである,ということをお話したいと思います.

工学における研究とは,現実社会の課題に対して数理的能力を活かした新規な解決策を提案する行為をさします.この「新規な解決策」のところが曲者です.フィクションの世界では,年若い主人公がそれまで全く経験のない世界に放り込まれ[i],その分野のプロが見過ごしていた(素人ならではの)柔軟かつ独創的な発想で問題を解決に導く,ということがよくあります.その影響かどうかはわかりませんが,学生の多くは,問題の独創的な解決策は「何もない白紙の状態から急にひらめく」ものだと思っていることが多いように感じます.これは大きな誤りです.

俳人の千野先生が書いたウェブ上の記事[1]を読んでください.要約すると「他人の作品は読む必要が無い.作品の着想や言葉は自分の中に既にある」などと思っている人たちの作品は,どれも不思議と似通っていて,しかも凡庸だということが書かれています.そして,これとまったく同じことが,研究についてもいえます.断言しますが,ちゃんとした研究者の書いた論文を充分な量読んでいない学生は,良い卒業論文を書くことはできません.みなさんの周りに,他人の漫画を一切読んだことのない漫画家志望の人や,過去の名作絵画を一切見たことのないという画家志望がいたらどう思いますか?

「自分は○○に興味・関心がある.まだ何も勉強していないが,自分の中には○○の歴史を変えるほどのすごいアイデアが眠っている」と思う人は[ii],研究室に配属されたらまず○○に関する先人たちの苦悩と苦闘の歴史を学び,これまでに積み重ねられてきた努力の厚みと独創的なアイデアの数々にガツンとやられてください.あるいはやられすぎて,「○○はすでに研究しつくされている.自分のやることなんてもう無い」と絶望するかもしれませんが,そこからこそ本当の勉強と研究が始まるのだと思います.

なお,すぐれた論文を読むためには(多くの場合)数学・物理,英語力が必要で,勉強した内容をまとめるためには国語力(読解力・作文力)が要求されます.それらは1~3年までのカリキュラムに含まれていたはずですが,もし積み残しがあった場合には,ゼミ1と平行してそれらを復習することになるでしょう.

基礎力を高め,優れた論文を沢山読み,そして良い研究をしましょう.自戒をこめて.


[i] このような設定は読者の主人公に対する感情移入を容易にするためにあるのでしょう.

[ii] その心意気自体は大事だと思います.発想そのものは素人的で良い.ただし解決策は玄人的でなければならない,と主張するトップ研究者もいます[2].

 

参考文献:

[1] 千野 帽子ら, “人の作品を読まない人の作品が、みんな似ている理由,” 日経ビジネスオンライン, 2012. http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20120116/226195/

[2] 金出 武雄,“独創はひらめかない―「素人発想、玄人実行」の法則,”  日本経済新聞出版社, 2012. http://www.amazon.co.jp/dp/4532318416/

 

 

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