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電情日記

iPad mini

杉浦 修

千葉工業大学では2013年度から新入生全員にiPad miniを貸与しています。その関係で教員にも2年前からiPad miniが配布されました。それまでキーボードとマウスがついたWindows PCしか使ってこなかった私にとって,本格なタブレットデビューとなった次第です。ピンチイン・ピンチアウトをおもしろがっていたのは最初だけで,すぐにPCとの使用感・常識・文化の違いから戸惑いを感じました。iTunesやDropbox等を経由しないと他のアプリにファイルを渡せない,PCで閲覧できてiPadで閲覧できないWebコンテンツがある,PCでは無料・機能制限なしで使える高性能な電子回路シミュレータがあるのにiPadにはない,WordやExcelファイルをオリジナル通り完全に閲覧できるアプリがないなど,なんとなく窮屈で不完全燃焼な感じを覚えたものです。

そうした難点は感じたものの,モバイル性能は断然すぐれており,研究室の外でのメールチェックや,学内会議の資料,学会での予稿集の閲覧にiPad miniは欠かせないものとなりました。最近購入した低価格のWindowsタブレットと比較してみるとiPad miniの内蔵カメラがどれほど高性能であるかよく分かります。アプリに関してですが,タブレットを向けた方向の星座を表示するアプリはタブレットの特性をフルに活かしている好例ではないでしょうか?ミクロの決死圏という映画がありましたが,たとえば電子デバイスの内部に入って,タブレットを向けた方向の構造や電界分布・電位分布が見えるようなアプリを作れば電子デバイスの理解に役立つのではないだろうか?いや,余計に分かりにくくなるかな?などと妄想しています。私がiPad miniを使い始めてから2年経ちましたが,その間にも状況はどんどん変化しています。非純正アプリの性能不足を嘆いていたWordやExcelファイルについては,昨年末に本家のWord,Excel,PowerPointが無料アプリとして登場しました。昔は閲覧できなかったWebコンテンツが,FlashからHTML5に変わったためなのか,いつのまにかスムースに表示されるようになっています。電子回路シミュレータはPCに比べてまだ不満の残る状況ですが,これも近いうちに解消されるでしょう。

さて,この2年間でiPad mini以外に学内でどのようなことが起こったのだろうかと振り返ってみると,色々ありました。メールシステムがMARINE Web MailシステムからGmail化した工大メールに変わりました。マイクロソフト社と契約締結して学生向けOffice365の運用も始まりました。授業改善の一環として全学的に実施してきたアンケート調査も変わりました。昨年度までは「授業満足度調査」という名称で,クラス毎に調査はしますが,結果報告は学科毎の統計データを示すにとどまっていました。ところが,今年度から「授業アンケート」と名称が変わり,学科毎の統計データだけでなく,「学生諸君の達成感に関する設問」(5項目)と「総合評価」(2項目)の数値を科目名・担当教員名と共にキャンパスポータルで公開しています。FD委員会の本気を感じます。学生寮は,キャンパスから遠く離れていた千種寮から,新習志野キャンパス講義室すぐ近くの桑蓬寮(男子寮)と椿寮(女子寮)に変わりました。動かずにいるより,動いた方が安定することは自然界にもあります。これは電情日記の前の記事で菅原先生が紹介されている「動的平衡による流れ」と同じことだと思います。「千葉工業大学」というひとつの生命体として,大学内部の変化が今後も続くでしょう。

こうした学内の変化・環境改善と比べて自分が担当するふたつの講義はどのような変化を遂げたかと言えば,ひとつの講義は授業支援システムに毎回の講義資料と課題解答の登録を終えたところで,履修学生は大学から貸与されたiPad miniをpdfファイルビューワにして,講義資料を閲覧している状態です。タブレットの特性を十分利用しているとは言えず,今期の授業アンケート結果の報告はまだ受けていませんが,もうひと工夫必要な状態であろうと認識しています。残るもうひとつの前期開講の講義は,授業アンケートの結果公開で判明したのですが,同じ科目を担当されている山本先生,室先生のクラスと大きな開きがあり「要改善」の黄色信号が灯っている状況です。iPad miniを使って改善できないか考えてみます。もちろん,節操なく新しいものに飛びつけばよいという訳ではないですが,原因はすべて学生側にあって,こちらは何もすることはないと突っぱねてよいという問題でもありません。改善できる何かが自分にあると謙虚に考えなければ事態は変わりません。世の中はそうやって進歩していくものだと思います。上からやれと言われて渋々やるより,自分で戦略を考えて実行する,こんなことができないだろうかと企んでみる,そんな時の方が楽しいものです。来年度は3年生がiPad miniを持っている学年になります。ゼミナール1で杉浦研に配属された学生を巻き込んでiPad miniで何ができるか考えてみたいと思います。

ところで,教員に配布されているiPad miniのレンタル期間は2年間で,近々新しい機種に交換となります。iOS6からiOS8までアップデートしてきて,若干もたつきを感じるようになったiPad miniが新機種になってどのように変わるのか楽しみです。

写真はKeysight Electronic HandbookというアプリのLogic Circuit SimulatorでJK-FFの4bitカウンタを組んだ様子です。左がLogic Simulator画面,右がOscilloscope画面です。簡単なデジタル回路のシミュレータとしては使えるのではないでしょうか?左の写真で分かると思いますが,大学から支給されたケースとは別に,キーボード付のケースを購入して使っています。ただし,思ったほど出番がありません。普段は右の写真のように折り込んで物理キーボードは使わず,オンスクリーンキーボードで入力を済ませています。長文はやはりPCでなければ打ち込む気になりません。キーボードよりも「画面のそこをつかみみたいのにつかめない」という意味で「マウスがほしい」というじれったい状況が今でも続いています。

 

電情日記

動的平衡による流れとしてのシステム

菅原 真司

前回に続き,今回も私は読んで興味深かった本について書きたいと思います.今回取り上げるのは,福岡伸一著,「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)です.福岡先生は分子生物学がご専門のようですが,絵画や昆虫採集などにも造詣が深く,アメリカでの研究生活の経験もあり,それらの知識や経験を織り込んだエッセーが大変素晴らしい作家です.エッセーはこれ以外にもいろいろ出版されていますし,日本経済新聞の日曜日の最終面の連載「芸術と科学のあいだ」は,私の毎週の楽しみになっています.学生の皆さんには,どれかひとつでも一度読んでみることをお勧めします.

さてこの本ですが,遺伝子とその振る舞いの発見までの顛末や,カリフォルニアのサーファーがポスドクを渡り歩きながら一発屋的にノーベル賞を取ってしまった話,ニューヨークやボストンでの著者のポスドク時代の生活など,普通に読んでも見所満載なのですけれども,特に私の専門分野である情報通信工学の観点から興味を持ったことについて,ひとつだけ紹介しましょう.

生命の定義は,著者によれば,通常よく語られる「自己複製するもの」というよりはむしろ,「動的平衡による流れ」であるということのようです.つまり人間も含め生物というものは,常に自分の体が今の状態であるように秩序を保つために,絶え間なく自分の体の構成要素を壊し,再生を繰り返している存在であるということです.体を構成する細胞などのパーツは常に劣化し,正しく働かなくなる可能性があります.そこで,不具合があろうが無かろうが,定期的にそれらのパーツを壊しては再生して入れ替えることで,逆に見た目も機能的にも同じものがずっと存続しているように見えるわけです.原子の単位で見るなら,それらは常に入れ替わっており,例えば,ひとりの人間のある細胞を構成する窒素原子は長い間そこに留まることはありません.外から食物として体内に入った窒素原子は吸収され,臓器の一部を構成したかと思えば,しばらくすると新陳代謝により体外へ出てゆくというような,人体を通過する一連の流れが存在することになります.逆説的ですが,このような流れによって,片時も同じ部品で構成されること無く変化し続けることで,人間は数十年もの間,辛うじてずっと変わらず平衡状態を保っているように見えるのですね.私にはこの仕組みが,巨大な情報通信システムである検索エンジンGoogleの設計コンセプトに大変近いものがあるように感じました.

下の写真は,私が以前カリフォルニア大学で客員研究員をしていたときに,休日を利用して訪ねたサンディエゴ郊外のある教会です.スペイン人が建てたものだと記憶していますが,度重なる日照と風雨によって削られて,建立当時の面影はありません.でももし,建立当時と同じ姿形と機能を維持しようとするなら,常に壁や柱を少しずつ入れ替え,(歴史的価値として建立当時の建築素材を残す必要が無ければ)百年後ぐらいにはすべての部品を建立当時とは違うものに入れ替えるような作業が継続される必要があるのですね.

生物というシステムは,自分を保つために,常に自分を壊し,構成要素を入れ替え続けている.これはGoogleに限らず,人間が人為的に作り出した多くの工学的なシステムにも共通するところがあるように思います.以前からある取り組みですが,情報通信系のコースでももっと生物学をしっかり学ぶ態度が必要かも知れません.

 

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