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電情日記

先人の生き方と知恵に学ぶ

久保田 稔

最近,世の中のプロフェッショナルや成功している企業とその社長を紹介するテレビ番組などをよく見ています.ゆっくり見る時間はなかなかとれないので,録画して早送りで見たり,他の作業をしながら音声だけを聞いたり(おもしろそうなところは作業を中断して画像を見ることもあります)することが多いですが…紹介される方々はすぐれた成果・業績をあげられています.分野が異なるので,成果や業績につなげる進め方は様々ですが,いくつか共通することがあるように思います.

1つは諦めないことです.紹介される方々の経歴をみると必ずしも順風満帆であったわけではなく,大きな失敗や挫折を経験されていることも多いようです.しかしそのような状況になっても諦めることなく,新たなアイデアを考え,仕事の進め方工夫をすることで,それらを乗り越えています.

もう1つは何を求められているか,何をしなければならないか,を常に考えていることです.良い仕事は世の中に受けいれられることです.ユーザの要望に合致しない製品やサービスを作っても受け入れられません.成功した方々は,どうしたら世の中に役立つ仕事ができるかを考えておられるようです.

学生のみなさんはまだ仕事をしていないので,上に述べたようなことは実感できないかもしれませんが,勉強や研究でも同様のことが言えるかと思います.

成績がよくない学生の様子をみてみるとわからないことがあるとすぐ諦めてしまうことが多いように思います.分からないことがあれば教員や友人に尋ねる,などして分かるようになるまで努力することが大切です.最近はインターネットの質問サイトに尋ねる方法などもあり,時間をかけずに多くの人の意見を聞くことができます.

また講義や研究指導をする教員は何を伝えたいのか,を推測してみることも重要かと思います.これが分かれば試験問題の内容が推測できたり,研究の方向性のヒントを得られることもあるかもしれません.

知識や技術が先人の努力の積み重ねであるように,その生き方も先人から学ぶことが多いです.今回はテレビの番組の話から始めましたが,読書からも先人の生き方や知恵を多く学ぶことができます.これらを活かして勉強や研究に取り組んでもらいたいと思います.

電情日記

日常茶飯の一般相対性理論

岡本 良夫

20世紀初頭に「量子力学」と「一般相対性理論」が登場し,物理学の世界は大きく変化しました.特に量子力学は「不確定性原理」や「状態の重ね合せ」など,全く新しい概念を導入したことから,量子力学に基づく物理学を「現代物理学」と呼び,一般相対性理論を含めた確定論的な物理学は「古典物理学」として区別するほどです.また,量子力学は半導体を始め様々な物質の物性解析に利用され,現代社会に必要不可欠な存在になっています.量子力学の成果を工業的に応用することを目的とする「量子工学」という工学分野が登場しているほどですから,理系・工学系の学生であれば量子力学に関連した何らかの講義を受講していることでしょう.一方,工学部で一般相対性理論に関する講義を開講している大学は見当たりません.現状では日常生活との関わりがほとんど無いからでしょう.しかし,状況は変わりつつあります.その一例を紹介しましょう.

スマートフォンやタブレットにはGPS受信機が内蔵され,便利に使われています.複数のGPS衛星からの電波を受信し,各衛星からの距離と時刻を算出することで受信機の3次元的な位置を決定する訳ですが,測位精度を上げるには全てのGPS衛星に搭載した時計を正確に同期させておく必要があります.例えば時計の同期が1msだけずれれば約300mの測位誤差が生じます.さて,GPS受信機は地表にあり,GPS衛星は約2万kmの高度にありますから,地球による重力ポテンシャルは大きく異なります.一般相対性理論によれば重力ポテンシャルが低いほど時間の進みは緩慢になります.従って,地表ではGPS衛星の高度に比べて時間の進みが緩慢です.逆に,地表を基準にするとGPS衛星の高度では時間が速く進みます.計算してみると5.29×10-10倍だけ(1日当り45.7 msだけ)速くなります.また,GPS衛星は軌道上を3.874km/s  で運動していますので,特殊相対論的効果によって0.389×10-10倍だけ時間の進みが遅くなります.これを前述の重力ポテンシャルによる効果と合計すれば,GPS衛星内の時間は地表に比べて(5.29-0.839)×10-10倍,すなわち4.45×10-10倍だけ早くなります.それゆえ,地表の時計とGPS衛星の時計を同期させるには,GPS衛星の時計を4.45×10-10倍だけ遅く設定する必要があり,実際にそのように対処しているのです.日常茶飯に利用されているGPSを設計する際には,一般相対性理論は必要不可欠な存在となっているのです.

GPS衛星に搭載する原子時計は小型・軽量の必要がありますので周波数安定度は高々10-13程度ですが,最高水準の原子時計の安定度は10-15程度であり,これは約3000万年で1秒の狂いに相当します.一方,高度0mの点の時間を基準とすると,高度10mの点における時間は10-15倍だけ早く進むことが分かります.つまり,最高水準の原子時計を使えば,高度差10mに対する時間の経過速度の違いが検出できる訳です.驚いたことに,この原子時計の精度を更に1000倍にする「光格子時計」の開発が進められています.レーザー光の干渉縞によって生成した光格子(周期的な原子トラップ)のそれぞれに極低温にまで冷却されたストロンチウム原子を閉じ込め,これら多数のストロンチウム原子が吸収・放射する光の周波数を測定する,というものです.言わば「多数の原子時計の平均を取る」ことになり,周波数安定度は10-18に達するものと期待されています.これは300億年に1秒の誤差であり,地球上では高度差1cmに対する時間の経過速度の違いが検出できることを意味します.あるいは0.4m/s の相対速度で生ずる特殊相対論的な時間経過速度の違いが検出できるのです.一人の人間の頭と足とで時間経過が異なり,手を振ればその速度に応じて指先における時間の経過速度が変化する,という物理現象が具体的に観測できる時代がすぐそこまで来ていると言って良いでしょう.

原子時計や光格子時計は量子力学的な現象を利用した装置です.こうした量子力学の賜物によって一般相対性理論が日常生活で利用され,身近なものになって来つつある訳ですが,実は一般相対性理論そのものを量子力学的に扱う事には誰も成功していません.特殊相対性理論は量子力学に組み込まれて「場の量子論」が作られ,いわゆる「標準模型(標準理論)」の根幹となっていますが,重力の理論である一般相対性理論を量子力学的に扱う量子重力理論はアインシュタイン没後60年の今も未完成です.「超弦理論」や「ループ量子重力理論」などが候補となっていますが,さて,どのようなアイデアで量子重力理論が完成するのか,今後が楽しみです.

電情日記

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