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電情日記

生命現象と科学技術

関 弘和

様々な生き物の種類とその生命現象のテンポには面白い関係があるようです。生き物の体重と心拍数や呼吸などの関係に注目した一つの説として、心拍数は体重のマイナス4分の1乗に比例する、時間の周期で言うと体重の4分の1乗に比例して長くなる、というものがあります(これは諸説ありますので注意してください)。グラフ化すると下の図のようなイメージでしょうか。例えば体重30gのネズミは0.1秒に1回程度、600~700回/分、体重700kgのウマは2秒に1回、3トンのゾウでは3秒に1回だそうです。人間の心臓は1秒間に1回程度、1分間に60~70回程度です。下の図は必ずしも正確には書いていませんが、確かに心拍数が体重の何乗かに反比例しているようではあります。このように生命現象が数式で表現できる(かもしれない)というのは不思議なことです。また、一生のうちに心臓が拍動する回数はどの生き物でも約15億回でほとんど同じなので、これを図の心拍数で割ると、それがおおよその寿命となります。実際の寿命はネズミだと数年程度、ゾウは70年ぐらいです。

体重と心拍数の関係

このように生命活動のテンポという意味で考えると、人間社会での1秒、1分という物理的な時間とは異なる時間軸で、小さな動物は速く流れ、大きな動物ではゆっくり流れているように見えますが、時間軸が異なるためトータルの寿命という意味ではほぼ同じということでしょうか。ネズミなどは確かにいつもせわしなく動いているようにも見えます。

では人間の場合はというと、心拍数から見れば寿命は30年程度になってしまいます。実際、縄文時代や弥生時代ではそれぐらいだったかもしれませんが、現在の日本人では80歳を超えています。これは現在に至るまでの食料の安定化、暮らしの安全化、医療技術の進歩などが長寿命化させたのは言うまでもありませんが、それらに本学科で扱う電気・電子・情報工学が大いに寄与した、不可欠であったこともまた事実です。そのような人間社会への貢献という視点で電気電子情報工学に関わる様々な学問を勉強してみるのもいいと思います。

ちなみに最新の医療技術の一つとして、四次元放射線治療というものがあります。これはがん細胞に集中的に放射線を照射する際、呼吸などによって体が微妙に動いてもその位置変化を予測するなどして正確に照射できるというもので、三次元位置と時間で、合わせて「四次元」と呼ばれます。電気電子情報工学のあらゆる技術がつぎ込まれた大変高度な医療機器と言えるでしょう。興味があればぜひ調べてみてください。

人間が長寿命化した結果、がんが増えたと言われています。長寿命化できたのは科学技術が一因です。つまり、科学技術によって増えたがんを、また最新の科学技術で治療している、とも言えそうですが、その進歩を止めることはできませんし、止めるわけにもいきません。科学技術で様々な問題を乗り越えていくしかないんだと思います。

※今回の文章は週刊新潮「がんの練習帳」等を参考にしました。

 

電情日記

リーダーシップと分散システム

菅原 真司

昨年4月に着任しました.専門分野は情報通信ネットワーク,あるいは分散システムで,最近はディジタルコンテンツの流通などを中心に研究をしています.どうぞよろしくお願いします.先日私は書店である本[1]を衝動買いしたのですが,初めての電情日記である今回は,それに関連した話を書こうと思います.

その本の著者は,外資系経営コンサルタント会社の人材採用を長く担当した日本人女性で,本の中では現在の日本の企業あるいは社会で真に求められる人材について語っています.大変よく売れた本で,出版当初はあちこちで取り上げられていたように記憶しています.

日本企業で人材を採用する場合,一般には外国語能力を含めた学力や知識,創造性,協調性などが求められますが,著者である彼女が重視する採用基準はリーダーシップです.これがあってはじめてそれ以外の高い資質が生かされると言います.企業の業務の多くには何らかの問題解決が含まれており,これには問題の分析と対応策の作成に加え,その対応策を実際に遂行する力が求められます.周囲に働きかけ,関係者を巻き込み,説得して最終的な解決に至るにはリーダーシップが欠かせないということでしょう.詳細は省きますが,彼女はどの組織でも全員がリーダーであるべきだと説いています.

少し奇異に思うかも知れませんが,この本を読みながら,なんだかリーダーシップの話と似ている気がして私が思い出したのは,情報通信ネットワーク上の計算機システム(分散システムと言います)のことでした.世の中のこの手のシステムには典型的にクライアント-サーバ (client-server: CS) モデルとピアツーピア (peer-to-peer: P2P) モデルの2つがあります.それぞれ適した使い道があるので,どちらが優れているということはありませんが,両者はよく比較されます.

少数のサーバ(高性能な計算機)に仕事の負荷を集中させるCS型システムは,高価でも強力なサーバがあれば管理が楽な上,サーバ以外の計算機にはほとんど仕事をさせずに済みます.しかし多様な仕事を少しずつやるのは不得意です.また,サーバにかかる負荷が想定を超えたり,サーバ自体が故障したりした場合には,システム全体が使い物にならなくなります.

これに対してP2P型システムは,多数のピアと呼ばれる端末(能力の低いPCなどでもよい)から構成されます.各ピアは自分が出来ない仕事は他のピアにお願いしますが,自分ができる仕事を依頼されればこれを処理し,他のピアが故障したときにはその仕事も肩代わりしながら,システム全体がうまく回るように互いに協力しあいます.しかし多数のピアそれぞれに少しずつ異なる機能を持たせるので,複雑なシステム構成になり,管理コストがかかります.

では企業などの組織,ひいては日本の社会全体におけるリーダーシップのあり方は,CS型とP2P型に例えるなら,どちらが今後有望でしょうか.P2P型は柔軟です.全体で協力して多様な仕事を処理できるからです.ただし,どの人も自分の得意分野では必ず他のメンバーをリードし,組織に貢献することが必要です.CS型は一部の人に責任と権限と負荷が集中します.残りの人はそれに従うだけで自分の思い通りにはなりませんが,考える必要がないので楽かもしれません.

従来のように私達が外国に追いつくことだけを求められる時代なら,目標は明らかで進む方向の判断を誤ることも少ないので,少数のリーダーに資源を集中し,彼らだけで業務を進める形態が効率的だと思います.でも物質的に豊かで成熟した今の社会では,個人の考えや嗜好が広い範囲に散らばり簡単にはまとまらなくなります.世界のライバルと肩を並べて競争する現代は,どの組織も進む方向を私達自身がよく考える必要も出てきました.今後はさらにあらゆる問題の解決手段や社会に提供すべきサービスは多岐に渡るようになるでしょう.このような状況で,少数のリーダーがきめ細かく柔軟に組織全体が満足するような舵取りをするのは難しいのではないでしょうか.結局私も上記の本の著者と同じように,なるべく多くの人材がリーダーシップを発揮する社会がよさそうかな,という結論に落ち着きそうです.

一歩前に出て,皆に「こうしてみようよ」と言うのは骨が折れることですが,失敗するリスクを負うことも含めて組織全体を良い方向に導こうと努力するのがリーダーシップです.一見損な役回りのようですが,特に学生の皆さんにとっては,このような経験を日常的に積むことはその後の成長に必ず繋がると思います.いつか日本中がリーダー的人材で溢れるように,私も微力ながら手助けができるといいなと思います.件の本を読んで,そんなことを考えました.

 

参考文献
[1] 伊賀泰代,「採用基準」,ダイヤモンド社,2012年11月.

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