• トップ
  • 教育内容
  • 教員紹介
  • 資格
  • 進路
  • 入試
  • JABEE
  • CITものづくり

電情日記

役に立つ電情日記2 勉強の役に立つソフトウェア

中静 真

今回で2回目の電情日記となる中静です.私の研究分野は信号処理です.これは,音声や画像など,数値の列で表すことができる情報を処理し,より有益な情報へ変換する学問分野の総称です.中静研究室で行っている研究例は研究室のホームページをご覧下さい.

さて,信号や画像処理の研究では,何を使って研究しているでしょうか.ノートに筆記用具はあたりまえですが,考えついた処理の手法を画像や音声に適用して,効果を調べる場合にはコンピュータを使います.大学のカリキュラムでは,プログラミング言語として汎用性のあるCやJavaを使って演習を行っていますが,信号処理,画像,通信,制御分野でシミュレーションのために使われているツールはMatlabと呼ばれる技術計算言語です.また,Matlabには,シミュレーションだけでなく,アルゴリズムから実際に動くシステムの試作を行うためのツールが豊富に備わっており,世界中の開発者・研究者の標準的なツールとなっています.

このMatlabはMathworks社が提供しているソフトウェアで,ライセンス料を払わないと使えない有料のソフトウェアです.フリーソフトとして,Matlabに互換性を持たせたFreemat, Scilab, Octaveなどがあり,こちらは誰でもダウンロードして使うことができます.これらのMatlab互換の技術計算言語では,変数一つが行列や多次元の配列を表し,計算を対話的に実行することで結果をすぐに見ることができます.詳しい説明は省きますが,大学の学部で勉強する線形代数・信号処理・数値計算さらに画像処理などの内容であれば,数行のコマンドで計算を実行し,結果を可視化して確認することができます.

現在,千葉工業大学では,新入生にiPadを配布しています.Matlabのような技術計算言語が導入されば,講義で説明した内容を即座に自分のiPadで実行し,学生が自主的に数値を変えたりしながら例題を作り,理解を深めることができるようになるかもしれません.

Matlabは,線形代数を基本とした技術計算言語ですが,電子回路のシミュレータにもフリーソフトが存在します.SPICEと呼ばれるソフトウェアは,現在でもLSIの設計に利用されている電子回路のシミュレータで,派生したソフトウェアのいくつかはフリーで利用することができます.実際に,多くの大学の演習で採用され,シミュレーションで動作を確認し,その後,回路を作って検証する実験・演習が行われています.

現在,インターネットの普及により,多くの科学技術用ソフトウェア,さらには大学の講義ですらフリーで手に入る時代になっています.(例えばマサチューセッツ工科大学A. V. Oppenheim先生の”システムと信号処理”の講義はこちらで聴けます.私の講義に物足らない方はぜひ聞いて下さい.)ネットの環境は,自分で勉強したいという動機があれば,自主的にどこまでも勉強できる環境と言えるのではないでしょうか.このような環境下で”大学”の価値とはなんでしょう?真の意味での大学の危機は,18歳人口の減少よりも,むしろ低コストで知識を獲得して勉強できるネット環境の普及にあるような気がしております.

とりあえず,そんな私の不安は置いといて,ハードディスクに容量が空いている方は,紹介したソフトウェアをインストールして講義の復習をしてみてはいかがでしょう?何か得られるものがあるかもしれません.

電情日記

非破壊検査でインフラ整備に貢献する

ヨーロッパでは宮殿や教会など昔の建物が石で造られたのに対し、日本では木造がほとんどだった。北極圏に住むエスキモー族は雪の家、中国雲南省のイ族は竹の家に住んでいる。イギリスの田舎に行けばその地域の土によって、家の色が変わる。自然と共存する先人の知恵が今でもよく窺える。

20世紀に入って、コンクリート文明が世界を席捲してきた。コンクリートは成形性と頑丈性が優れているため、建物のみならず、トンネル、道路、橋梁、堤防などなど、あらゆる建造物に使われるようになってきた。ところがコンクリートは大丈夫なのか?日本だけでも1999年の山陽新幹線のトンネル崩落事故、昨年12月の中央自動車道の笹子トンネル崩落事故、まだ鮮明に覚えられる。事故原因はロックボルトかコンクリートそのものか個々につき偶然性があるものの、日本全国として前世紀70,80年代の高度成長期で沢山作られたインフラ整備は、そろそろ「安全消費期限」になってきたと言われている。大地震や津波など自然災害への耐性も含めて、7年後の東京五輪に向けて、現在日本政府は「国土強靭化」を巡って基本法を作り上げいろいろとリスクマネジメント対策を推し進めている。

筆者は建築家でも歴史家でも政治家でもないし、近代文明の是非を評判するつもりもない。一技術者として、この話題に関係する研究を少し触れている。1つはコンクリートの強度評価に関する研究で、2008年4月16日の電情日記「超音波 知りたいことを 測り出す」に紹介したのでここで割愛する。

もう1つは今年始めたばかりの地中鉄筋の計測に関する研究である。トンネルの内壁や山崩れ防止のための擁壁など、旅の途中であちらこちら見られる。おもてはコンクリートで覆われているが、実は図示のように、コンクリートブロックを固定させるために鉄筋アンカーボルトやロックボルトが多く使われている。なかに長いものは数十mまでもある。現在の点検基準では目視や打音法、または引き抜き試験が基本となっているが、文字通り地下部分の長さや付着状態腐食状態の検査精度に問題がある。超音波を利用して目に見えない部分の検査に有効であるが、通常の超音波パルス反射法なら数mまでしか測れない問題も残っている。現在、我々の研究室内では電磁誘導法の利用を試みている。基本原理は外部振動源の替りに電磁波を使ってローレンツ力で鉄筋を振動させる方法で、駆動エネルギーと駆動周波数の制御が容易でかつ再現性が優れる特性を利用する狙いである。図示の長さ2mのサンプル鉄筋の端面反射信号例により、電磁誘導法を利用すれば異なる周波数成分の異なる伝搬特性が見て取れる。データを積み重ねた上、これらを解析することで電磁誘導法を利用することで通常方法よりもっと豊富な情報が得られるのではないかと期待する。因みにこの間ある弾性波非破壊検査のシンポジウムで、電磁誘導法を活用した鉄筋コンクリートや地中支持柱の検査事例を聞いて、嬉しく思っている。

人類は自由と裕福を望み、「自然と友に」だけ満足せず、「自然と戦う」まで頑張って現代文明を作り上げてきたが、直面する課題も時代とともに進化した。学生の皆さんは将来、きっとどこかで何かをして世界文明に貢献するだろう。

陶 良

 

電情日記

2013年11月
« 10月   12月 »
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

このページのトップに戻る