• トップ
  • 教育内容
  • 教員紹介
  • 資格
  • 進路
  • 入試
  • JABEE
  • CITものづくり

電情日記

心臓突然死を予防するために

岡本 良夫

病気とは無縁な生活を送っていた人が,事故や災害とは関係なく,ある日突然に亡くなってしまうことがあります.こうした突然死の原因としてとしては脳血管障害や消化器疾患などもありますが,心臓に起因する「心臓突然死」が6割以上(年間5万人程度)と言われています.急性心筋梗塞や狭心症,心筋疾患などの心臓病が心臓突然死の原因ですが,心臓が停止する直接の原因は心室細動という不整脈が大部分です.心室細動になると心室のポンプ機能が失われて5~15秒で意識が消失し,3~5分で脳死となりますので,死を免れるには即座に除細動(細動を停止させる処置)が必要です.そのため,空港や駅だけでなく,市役所や学校・図書館などの公共施設にもAED (Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)が置かれるようになりました.

さて,生体を構成する種々の細胞の多くは絶縁性の細胞膜で外界と仕切られていますが,心臓の場合は隣接する心筋細胞の間に微小な「穴」があって電気的に繋がっています.そのため,心臓の一部が興奮すると,興奮に伴う電流が周囲の心筋細胞を興奮させ,興奮の波が秒速数十センチメートル程度の速さで心臓全体に広がって行きます.その際,興奮前面(興奮部と未興奮部の境界面)に起電力が発生し,体表面では心電図として記録されます.通常はペースメーカ細胞から出発した興奮が順序良く心臓全体に広がり,心臓が収縮して一拍を終えるのですが,時として興奮がグルグルと際限なく心臓内を巡り出すことがあります.これが上述の心室細動です.そしてAEDは体外から強い電流パルスを注入し,心臓を電気的にリセットすることで心室細動を止めるのです.

ところで,ヒトを含む哺乳類では心筋細胞は再生されません.心筋細胞の一部が失われると線維芽細胞と呼ばれる細胞が増殖し,欠損部は繊維組織によって置き換えられます.この繊維組織は収縮する機能も興奮を伝える機能も持ちませんから,心筋内のあちこちが繊維化するとポンプ機能が低下するだけでなく,興奮伝播が遅くなり,興奮前面の形が乱れて心室細動が生じやすくなります.また,興奮前面が乱れることから,心電図の高周波成分が増加します.このように,心臓突然死の主要な原因である心室細動と心電図の高周波成分は深く関係していますので,逆に高周波成分を検出することで突然死のリスクが評価できるのです.

前置きが長くなりましたが,これで私の研究テーマの一つを紹介するための準備が整いました.つまり,繊維化が興奮伝搬にどのように影響し,心電図にどのような高周波成分が発生するのかを細胞レベル・組織レベルのシミュレーションによって検討し,心室細動の生じ易さを評価する研究です.興奮伝播のシミュレーション結果の一例を図に示しました.心室から辺の長さが1cmの正方形領域を切り出したと思って下さい.図はある時刻における膜電位の空間分布です.生きた細胞では細胞膜の内外で電位差があり,膜外の電位を基準とした膜内の電位のことを膜電位と呼んでいます.細胞が静止状態にあれば膜電位は-80mV程度ですが,興奮によって一気に+30mV程度になり,その後ゆっくりと静止状態に戻るのです.図では正負の膜電位をそれぞれ暖色・寒色で表し,電位の絶対値が大きいほど明るくなるように表示しています.水色の領域は静止状態の心 筋で,その中にポツポツと散在している青い小さな点々は繊維芽細胞を表しています.水色から黄色や赤・黒へと急変している所が興奮前面で,興奮は右側に向かって伝播しています.興奮前面が複雑に乱れていることが分かるでしょう.

最近では健康診断で心電図を計測することも普通になりました.使われているのはディジタル心電計ですが,ディジタルデータとして利用されることはなく,そのままプロットした心電図波形を医師が目視的に診断しているのが現状です.とは言え,将来的には種々のディジタル信号処理が施され,半自動的に診断結果が提示されるに違いありません.心室細動のリスクも評価の対象となるでしょう.私たちの研究成果が生かされることを期待しています

電情日記

勉強とは,何だ

相知 政司

昨年5月に原稿を書いてから早くも1年3ヶ月が過ぎました。この間,私の周りで訃報が相次ぎ,とても悲しい気持ちになりました。そこで,今回の電情日記では,「人生とは何だ」というテーマで書きたかったのですが,とても大きなテーマであり私にはまだそれを書く力量も人生経験も不足していることが,ハッキリしているので,今回は別のテーマにしました。

さて,これを読んでいる児童(小学生),生徒(中高生),学生(大学生)の皆さんは,日頃,大人から「勉強しなさい」と言われたことはあっても,「勉強とは,これこれこういうものです」という説明を受けたことが無いと思います。私自身も,子供達が「試験やだ」と言えば,「試験が嫌なら学校に行かなくて良い,学校を辞めて良い。だって,野球選手が野球やだって言っているようなもんで,そんなら野球を辞めるしかないでしょ。生徒も学生も試験の結果で評価されるのです。」と言っていました。しかし,「勉強とは何だ」,という根源的な説明をしておりませんでした。

ところが書くテーマは決まったのですが,まだ,勉強とは何だというのが,ハッキリせずに,モヤモヤとしていたので,Amazonで検索してみました。そしたら,「これまで誰も教えてくれなかった 受験勉強をしなければならない本当の理由」,関,伊藤著,秀英予備校発行という本がありました。早速,購入して読みました。さすがに予備校講師をされている方の本なので,受験生には大変有益で,勉強しなければいけないと思う本になっていると感じました。しかし,今回のテーマは,大学生にも大人にも,納得できるような説明をしたいと思ってテーマを決めましたので,この本は私の求めているものとは,若干,異なりました。

今回のテーマの勉強は,主に学校で教えている勉強のことです。よく言われるのは,「受験勉強なんて実生活では役に立たない」ではないでしょうか。しかし,世の中,資格試験はたくさんあります。電気の分野では,電気主任技術者を筆頭に多くの資格試験があります。詳しくは,「電気技術者試験センター」,「電気 資格」などで検索してみて下さい。また,会社に入って昇進試験もあります。現代社会において,試験や勉強から逃れることは,難しいです。資格や昇進試験に関係ない職業として,自営業も考えられますが,自営業だと全部自前でやらないといけないので,経理,労務,法律などの知識も必要となり,やはり勉強は欠かせません。

また,ここ数年,就職活動している学生に聞くと,希に自分が何をしたいのか分からないという学生がいます。そんな学生には,「勉強が不足していたのかもねと言います」。だって,勉強を一生懸命にしていれば,1科目くらいは興味があるとか,もっと勉強してみたいとか思う科目があるでしょ。それに関連するような仕事を探せば良いのにと言います。さらに,「教科書に書いてあることは全ての教科において,歴史です。電気回路や発変電・送配電の歴史が書かれた教科書で学び,日本の将来の電気エネルギーについて考えるのが勉強でしょ」と言います。つまり,過去(教科,科目)を勉強し,社会の未来を考え,その未来に対して自分がどのように貢献するかを考えるのが,勉強ではないでしょうか。当然,過去を勉強しない者は,将来を考える力がありません。

今後,社会はより複雑化・高度化・情報化が進むと考えられますが,その中で自分が自分らしく生きる,自分を社会の中でどのように活かしつつ,自分も含めこの社会を,さらに,国や人類の未来をどのようにしたいのかを考え,自分の行動でいかにして報酬をもらうかということが,勉強の先にあることだと思えてなりません。そのために,受験勉強も大学での勉強も非常に重要であると思い,日々,授業と研究(私自身の勉強です)に励んでおります。

著者の本棚 (本当は前後2重になっており,後ろ側にも本があるが奥の本は見えない)

電情日記

2013年8月
« 7月   9月 »
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

このページのトップに戻る