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電情日記

消えない聖火

陶 良

204本の花びらに燃え続けていた炎が消え、第30回オリンピック競技大会の幕が降ろされた。選手達は長年努力した成果を一瞬に輝かせ、我々に多くの感動を与えてくれた。4年に一度、大学に入ってから卒業するまでの期間と偶々同じである。

目標に向かって、日々地道な努力を重ねることでやっと成果が生まれてくること、学問もスポーツも同様であろう。実は今年の千葉工業大学「教育シンポジウム」で発表する予定があるので、この間では原稿作成のためオリンピック観戦しながら「教育」について色々と考えていた。夢を持つことが勿論重要であるが、それ以外にまた何かが必要ではないか、例えばゲームが面白いと思えば何のためでなくてもついついやってしまうのではないか、自問自答の間ノーベル文学賞受賞者ウィリアム・バトラー・イェイツ氏の教育に関する名言を思い出しました。

「教育とは、バケツを詰め込むことではなく、火をつけることだ。」

教員としてはやらせるよりやる気を引き出すのがもっと重要である。逆に学生としては学問への情熱が必要とも言えよう。

右の写真は、昨年発表した論文が海洋音響学会で論文賞を受賞し、先月のNews CITに掲載されたものである。この論文の内容は、超音波を使った距離測定方法の精度向上に関するもので、受信信号のSN比の向上かつ圧縮信号のパルス幅の短縮を狙う試みである。2009年2月18日電情日記「Yes I can!」にこの研究テーマを少し紹介していたが、今回発表したのはその継続研究で、SN比向上のために振幅変調した感度補正型送信信号を非線形周波数変調した感度補正型送信信号にする提案であった。振り返ってみると、我々は日頃切磋琢磨、試行錯誤を繰り返して研究を進めている際、受賞も思っていなかったし、何のためなんかもそれほど意識していなかった。やはり「もっとよくできないか」の探究心は主な支えであったことを改めて認識した。

若者には、好奇心、挑戦心が旺盛である。例えゲームでも毎回簡単で同じことの繰り返しであればすぐに飽きてしまうのであろう。近年、受験対策のため実力より点数を優先させる傾向が見受けられるが、学生の皆さんは是非「学問本来の面白さ」への好奇心を活かしてほしい。「正解」のみ求めず、常に「なぜ」を考えて中身を理解するように勉強すれば、勉強自身も楽しくなるし、実力も向上され、将来新しいものの研究開発など社会で一技術者としての力の発揮にも自然につながる。

情熱・チャレンジ精神、皆さんの心の中にある聖火を大切にしてください。

“Remember to let her into your heart, then you can start to make it better.”点火された204本の花びらが中央に寄せて1つ大きな聖火に集まった後、ロンドン五輪の開会式を締めくくった“Hey, Jude”の歌詞であった。

電情日記

関数電卓と留学の思い出

杉浦 修

小原先生から「人のタイトルを盗んではいけません」とお叱りを受けそうですが,研究員として渡米していた頃の思い出です。ちなみに研究していたのは化合物半導体を使ったヘテロバイポーラトランジスタです。関数電卓を研究していた訳ではありません。ベル研で電流増幅率11000のトランジスタ[1]を作ってみせた頃,米国で経験した関数電卓にまつわる思い出話です。

皆さんはどんな関数電卓を使っていますか?大学に入学して学生実験をする頃になると,指数・対数・三角関数を計算できる関数電卓が欲しくなります。私はアルバイトで貯ためたお金でHP-29Cという関数電卓を買いました。当時,大学生協が取り扱っていたプログラム機能付き関数電卓がそれだけだったからという理由で選んだのですが,逆ポーランド記法で計算式を打ち込まなければならない代物でした。しかし,その使い方に慣れると,「書式通り入力方式」,「式通り入力表示」,「数学自然表示」よりもずっと使い易く感じられる関数電卓でして,もちろん,米国にも一緒に持っていきました。

しかし,それが故障してしまい,ニューヨークのマンハッタンに出かけて新しいHP電卓を買い求めることにしました。店員にHewlett-Packard社製の電卓を探していると告げると,それならこれだろうとひとつの電卓を出してくれました。表示がLEDから液晶に代わり,サイズも縦長から横長になり,しかも薄くなるなど色々変わっていましたがHP-29Cで慣れ親しんだ指数関数などのキートップが見えたので,あまり吟味せずに買ってしまいました。ニュージャージーの家に戻り早速動作確認です。「四則演算はOK。指数関数も使える。次は三角関数だ。」という段階にきて「sin,cosがない!」ということに気づきました。吟味せず買ってしまったのはfinancial calculator(金融電卓)のHP-12Cでした。自分が探していたのはscientific calculatorでした。「指数関数があればそれは関数電卓だから三角関数も計算できる」とか「電卓には,四則演算と平方根ができる程度の電卓と,指数・対数・三角関数も計算できる関数電卓の2種類ある。(2種類しかない。)」などというのは勝手な思い込みでした。世の中「思い込みは禁物」ですね。

ニューヨークまで行かずとも家の近くをよく探せばお目当てのscientific calculatorを売っている店があり,そこで改めて購入したのがHP-15Cです。HP-12Cが今でも販売されているのに対して,HP-15Cはだいぶ昔に製造中止になってしまいました。「今もっているHP-15Cが壊れたらどうしよう。もっと大きくて無骨でよいなら逆ポーランド記法が使える機種はあるけれど」と心配していたところ,昨年の秋,復刻版が出ました。さっそく購入したのは言うまでもありません。
科学的な実験・測定をするなら関数電卓は必須のアイテムでしょう。人それぞれ使う道具にはこだわりがあるものです。私の好みを人に押し付けるつもりはありません。どんな機種でも構いません。その道具をフルに使い切ってください。千葉工業大学に入学するとPPA(Parents and Professors Association)から関数電卓のプレゼントがあります。オーソドックな機種ですが大学の講義・演習・実験に充分に使える関数電卓です。100円(税抜)で買える電卓と同じ機能しか使わないなんてことのないよう十分に活用してください。

左の写真:傷が多いけれども約25年前米国で購入して今でも現役のHP-15Cです。
右の写真:昨年秋購入した復刻版のHP-15Cです。Limited Editionの文字が見えます。どちらも69! を計算した結果を表示しています。計算スピードは復刻版の方が速い!

1)電流増幅率11000は桁間違いではありません。ふたを開けたらダーリントン接続した2個のトランジスタが入っていたという落ちでもありません。正真正銘,トランジスタ1個の電流増幅率です。詳しくは次の文献を参照してください。
Electron Device Letters, vol.9, no.5, p.253,1988.

電情日記

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