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電情日記

非線形光学とテラヘルツ波

水津 光司

2011年4月に着任しました水津です。非線形光学およびテラヘルツ波の研究をしています。非線形光学は、提唱されてから50年ほどが経過した歴史のある分野で、レーザー工学の発展と共に進歩して来た研究領域です。非常に強い光と物質が相互作用する場合に現れる現象で、レーザーの誕生によって人類が強力な光を得たことにより、物質の非線形応答に関する事象が現実の物となりました。主に光の波長変換に使われる技術で、計測や通信などに広く応用されています。一方、テラヘルツ波は比較的新しい分野です。古くは遠赤外線もしくはサブミリ波と呼ばれていた領域で、区分は今でも若干曖昧ですが、電波と光の中間に位置する周波数帯の電磁波です。遠赤外線という呼び方は光の方(高周波数側)から見た場合の呼び方で、サブミリ波という呼び方は電波の方(低周波数側)から見た場合の呼び方です。光の領域では、周波数の高い順番に、紫外線(10~400 nm)、可視光(380~750 nm)、近赤外線(750 nm~2.5 μm)、中赤外線(2.5~4.0 μm)、遠赤外線(4.0 μm以上)と並んでいます。一方、電波の領域では、テレビ等に使われているVHFやUHFの後に、マイクロ波(3~30 GHz)、ミリ波(30~300 GHz)、サブミリ波(300 GHz以上)と並んでいます。電波側からの呼び名の通り、波長がサブミリメートル(1mm未満)となる電磁波です。まだテラヘルツ波の発生が出来なかった時代に作られた電波法では、3 THzまでの周波数が法的に電波として定義され規制の対象になっています。実際は1~3 THzの領域の電磁波は空気中の水蒸気に強く吸収される為、無線通信に使う事は困難です。ただし、水蒸気の吸収を避けた周波数領域では、実験的に大容量無線通信が行われています。また、人工衛星間通信などの宇宙空間における通信での可能性も検討されています。これは、大気の吸収の為に地球上から傍受が不可能であり、指向性が高い事から特定の衛星間だけでの通信に使えるといったメリットがある為です。

テラヘルツ波領域の電磁波の発生は、電波側からも光側からも困難でした。まず電波側から見れば、超高速電子デバイスの開発に相当します。現在のCPU等の集積回路の動作はマイクロ波領域まで到達していますが、大雑把に言えばこれをテラヘルツ領域まで高速化する事に相当します。一方、光側から見れば、遠赤外線のレーザー発振もしくは非線形光学による波長変換となります。この場合、レーザーや非線形光学に使用される多くの結晶材料が、テラヘルツ波帯で強い吸収を有する事から、高効率化が困難でした。このように、テラヘルツ波は発生の困難さから長らく取り残されてきた電磁波領域であり、かつては電磁波の暗黒領域とも呼ばれていました。テラヘルツ波の研究に火が付いたのは、90年代初頭の事です。電圧を印加した半導体素子に超短パルスレーザー光を照射すると、光励起によるキャリアが発生し、ピコ秒オーダーの過渡電流が生じます。この過渡電流が電磁波を放射しますが、過渡電流の時間オーダーがピコ秒である事からテラヘルツ波領域の電磁波が放射されます。本方式は、今でもテラヘルツ波研究の主流であり、特にテラヘルツ波分光にとっては欠かせない手法となっています。しかし、高出力化、発生周波数の拡大に課題があります。そこで脚光を浴びつつある方法が、非線形光学によるテラヘルツ波発生です。

私が非線形光学ならびにテラヘルツ波の研究に従事したのがちょうど10年前の事です。当時はまだ過渡期であり、非線形光学によるテラヘルツ波発生は国内外に関わらず比較的マイナーな領域でした。非線形光学自体は、光領域ではとても深く広く進んだ学問となっています。ただし、それをテラヘルツ波に適用しようとすると、テラヘルツ波ならではの問題が出て来ます。特に大きな問題は、多くの非線形光学結晶がテラヘルツ波を吸収してしまう事で、せっかくテラヘルツ波を結晶内で生成しても、結晶自体がテラヘルツ波を吸収してしまう為、効率が非常に悪くなってしまいます。他にもいくつか問題が出て来てしまうのですが、いずれも光領域では気にもしなかった問題ばかりであり、光領域の技術をそのまま持ってくるわけにはいきません。しかし、ポジティブに考えれば、工夫し得る課題がたくさん残されている領域でもあります。また、この10年ほどでレーザー工学が目覚ましく発展して来ています。レーザー工学の発展は、光領域における非線形光学の常識さえ変えようとしています。テラヘルツ波の非線形光学自体が未完成の状況に加え、周辺技術が大きく進歩している事から、今後大きな飛躍が期待出来る分野です。また、未成熟な分野であるだけに、案外簡単な思いつきでテラヘルツ波光源の性能を大きく向上させる事が出来ます。新しい事にチャレンジしたい意欲のある学生さん達と一緒に、千葉工業大学オリジナルの技術を生み出し、世界に発信して行ければと思っています。

電情日記

ドイツ旅行記

脇本 隆之

皆さんこんにちは脇本です。私の日記は毎回海外の話題を中心にしていますが、今回の電情日記もドイツ旅行記と題してお話をしたいと思います。ドイツは日本から約9000 km離れたヨーロッパの中心にある国で、飛行機では11時間もかかります。首都はベルリンで人口は8千万人強、現在の国家体制になったのは1990年のことで、その前は第二次世界大戦に敗れたことから東西ドイツに分断されていました。

そんなドイツに初めて私が訪れたのは1998年の2月、ベルリンの壁が崩壊して7年と少し経った頃でした。

ドイツ地図

厳冬のフランクフルト・アム・マイン空港に降り立った瞬間、日本の乾燥しきった寒さとは全く異なる高湿度低気温に驚きを覚えました。この時期日本での湿度は30%を切ることがありますが、ドイツでは90%くらいになります。これは私の研究には重要なことで、高電圧を2つの電極間で放電させる時、放電電圧は電極間距離だけでなく気温と湿度(そして気圧)の関数になります。この関数において湿度は相対湿度(%表示)でなく、単位体積あたりの水分量で示した絶対湿度を用います。ちなみに1 ℃のとき、30%は1 g/m3を切り、90%は4.7 g/m3になります。国際規格であるIEC規格ではこの関数の適用範囲を1 g/m3以上15 g/m3以下と規定しています。つまり冬は1 g/m3を切り、夏場は30 g/m3を超える日本の気候がまったく考慮されていないのです。そのため、私達の研究室ではIEC規格を日本の環境を考慮した規格に改訂するために日夜放電電圧を測定して新しい関数を導出する研究を行なっています。

高電圧気中放電の様子

さて話を元に戻して、フランクフルトからはドイツ新幹線ICEでビュルツブルクへと走り、そこで地域快速REに乗り継いでフランケン地方バンベルクへと向かいました。1993年に世界遺産に指定されたこの街は私の大好きな街の一つで、これまでに5回以上訪れています。市内中心部を「ライン・マイン・ドナウカナル」というヨーロッパの三大河川を貫く運河が流れていますが、この運河では近くの採石場で採掘された石(フランケンシュタイン)を運ぶバージで賑わい、支流のアルテ・ラートハウス川岸のフィッシャーマンズハウスから漕ぎ出た漁師は家の前数メートルのポイントでその日の夕食に必要な魚を一匹だけ釣ってハウスに戻ります。決して乱獲をせず、40 cmもある大きな魚を一匹だけ捕るのです。また「ラートハウス」というのは町役場のことで、この旧庁舎の外壁に描かれたクピド(キューピット)の足が壁から飛び出しているのを見た時、真面目なイメージのドイツ人の茶目っ気に思わず顔がほころんだほどです。

ドイツ新幹線ICE

このような歴史がある街で世界最高峰の性能を持つ最新ディジタル測定器を開発しているシュトラウス氏に出会いました。シュトラウス氏の開発した測定器は分解能14ビット、最高サンプリングレート200 MS/s、定格入力電圧2 kVというもので高電圧放電現象を正確に計測する装置としては画期的なものでした。現在でもドイツと日本の国家標準としてこの測定器が採用されています。シュトラウス氏とは家族ぐるみのお付き合いをさせてもらい、何度もご自宅を訪問したり学会でご一緒していました。しかし去年、残念なことに胃癌のためこの世を去られてしまいました。寝耳に水とはまさにこのことで、奥様から氏の愛用品である手袋を形見として頂くまで亡くなられたことが全く信じられませんでした。優しい笑顔であった氏のご冥福を心からお祈りしたいと思います。
シュトラウス氏には一人娘がいて、ニュルンベルクでプロピアニストをされています。ニュルンベルクという街は2006年に行われたサッカーのワールドカップドイツ大会で日本対クロアチア戦が行われた場所として覚えている方も多いと思いますが、世界一のクリスマス市が立つ街としても有名です。毎年12月になるとハウプトマルクトプラッツ全体にマーケットが立ち並びます。写真は昨年のクリスマス市の様子ですが、ちょうどドイツ鉄道125年記念とも重なっていて、かなりの賑わいで人で溢れかえっていました。

ニュルンベルクのクリスマス市(2010年)

ドイツ国鉄はDB(デーベー)と呼ばれていて、全国各地を網の目のように結んでいます。ドイツを移動するとき私は主に鉄道を使います。新幹線にあたるのが前述のICE(インターシティエクスプレス)で、この他IC(インターシティ)や地域快速RE(レギオナルエクスプレス)、地域列車RB(レギオナルバーン)、近郊列車S bahn(エスバーン)などがあります。各都市には地下鉄Ü bahn(ウーバーン)やトラムが走っています。初めてドイツを訪れた当時は窓口の職員にカタコトのドイツ語を使って一生懸命切符を買ったものでしたが、途中から自動券売機でクレジットカードが使えるようになって楽になりました。しかし最近では犯罪防止のためでしょうか、券売機でクレジットカードが使えなくなり、私はまた再び窓口に並ぶようになりました。しかし昔と違うのは窓口の職員がみんな英語を喋れるようになっているのです。昔は私がドイツ語で「あなたは英語を話すことができますか?」と聞いてもほとんどの職員は「ノー」と言って首を横に振るだけでしたが(「ノー」は英語だろ!というツッコミは心の奥にしまっておきました)、最近は英語で「はい少しなら」と言いながら私の英語より上手に答えてくれるのです。実際この10年少しでドイツの人たちは英語を理解する人の割合が劇的に増加しています。通貨統合による国際化の反映なのかもしれません。日本もISOだTPPだとかの議論をしているのですから、これに対応した根本的な英語教育の見直しを図って国際競争力をつけなければ、将来は恥ずかしいことになりそうです。

それはさて置き、この便利な鉄道も日本の鉄道と相当異なります。例えば改札はありませんし、ICEも日本の新幹線のように専用軌道だけで運用されているわけでなく一般の線路も走行します。またどの列車がホームに入ってきてもおおよその停車位置しかわかりませんので整列乗車の概念がありません。日本を訪れたことのあるドイツの友人はみんな口をそろえて、時間通りにやって来て枠内にぴったりと停止する日本の鉄道を賞賛します。実際のところドイツの鉄道には私も幾度もヒヤヒヤさせられたことがあります。2003年の初夏、記録的な猛暑がヨーロッパを襲った年のことです。私はエアランゲンというニュルンベルクに近い街に泊まっておりましたが、一日休みが取れましたので、シンデレラ城のモデルになったことで有名なノイシュバンシュタイン城を訪れることにしました。その城はニュルンベルクの南200 km、ミュンヘンからは南西に約50 kmのところにあります。そこでまずミュンヘン行きのREに乗りそこで乗り換えることにしました。しかし乗車して1時間もした頃でしょうか、インゴルシュタットという駅で突然電車は止まってしまいました。車内放送は早口のドイツ語なので肝心な所が聞き取れません。忙しそうに動き回っている車掌を捕まえて聞いてみると、理由不明の故障のためここで運転を打ち切ることになった。接続は駅前に止まる路線バスでミュンヘン行きに乗れとのことでした。炎天下でもあり翌日の仕事に差し支えるということから、その時は諦めてエアランゲンに戻ることにしたのでした。その他にも遅延やそれに伴う乗車ホームの変更はしょっちゅうあることで、構内放送がよく聞き取れないうちは大変不安な思いをしたものでした。

今年の夏も大変な思いをしました。8月末にドイツ北部のハノーファーで学会があり、翌週から別の会議がバルト海沿岸のドイツ北東部にあるシュトラールズンドという港町で行われました。その移動手段として、私はハノーファーでの学会が終了した後、正午発のICEでハンブルクへ向かい、そこでザスニッツ行きのICに乗り換えることにしました。6時間半の行程ですので夕方にはホテルについてゆっくりできるはずでした。ところが停車する予定のないバート・クライネンという駅に緊急停車したではないですか。車内放送によると架線故障のためしばらく停車するとのこと。ようやく動き出したのはなんと4時間後のことでした。しかも行先を手前の駅に変更してそこで運転を打ち切り、そこ以降が目的地の乗客はタクシーを相乗りして送るとのこと。これはたまったものではありません。変更した行先を耳を澄ましてよく聞いてみるとそれは「シュトラールズンド」でした。ぎりぎりのところで相乗りタクシーは免れたのでしたが、結局ホテルに到着したのは夜11時過ぎのことで、その日は朝昼晩とも食事を抜くことになったのでした。

シュトラールズンドのマルクト広場

ドイツでは自然エネルギーによる発電をいち早く導入してきました。シュトラールズンドが面するバルト海でも現在、海洋風力発電計画が着々と進行しています。このシュトラールズンドでの会議で50Hertz Transmission GmbHという電力会社の方からその計画の詳細について聞く機会がありました。この電力会社はドイツ北東部11万km2に35 GWの電力を供給していますが、そのうち10 GWが風力発電によるものです。2015年にはこれをさらに7 GW、2020年には14 GWの海洋風力発電を整備増強するというのです。そのためにバルト海海上に19基の洋上風力発電設備を設置して、交流15万Vの電圧で陸上に送電するといったもので、それと同時に対岸のデンマーク、スウェーデンにも直流電圧で連携する壮大な計画です。またドイツ全体では2020年までに51 GWが風力で発電される計画が持たれています。

日本でも太陽光・風力発電といった再生可能エネルギーを用いた発電について古くから研究が進められてきましたが、さきの震災でますます自然エネルギーへの関心が高まっています。2010年末には411箇所、総発電設備容量2 GWの風力発電が導入されていたものが、今後2020年までに総設備容量10 GWの洋上風力発電システムを建設する目標が立てられています。

ドイツの風力発電設備

今回はドイツ旅行記と題して私の研究分野と絡めてお話をしましたが、まだまだ話は尽きません。でもこの続きはまたの機会に行いたいと思います。

電情日記

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