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電情日記

違うようで似ていること

杉浦 修

私の研究室では化学薬品を調合してめっき実験を行っています。それは集積回路を接続する配線を作るためです。集積回路というと化学よりも物理に関係が深そうな印象を持たれるかもしれません。しかし,全く関係のない違うものと思っていたことが意外と同じだったりします。

酸やアルカリを溶かした水溶液のpHはpH= -log10[H+]([H+]は水素イオン濃度)と定義され,これは高校の化学で習います。一方,半導体では不純物をドーピングしてキャリア密度を変えて電気伝導性を制御します。その原理や特性の計算は大学で習うところです。はじめは,pHはpHとして,キャリア密度はキャリア密度として別々に理解していました。化学より物理が好きだったので,無意識に別物として扱っていたのかもしれません。しかし,ある講義で共通点を教えてもらい考え方を変えました。

通常,物質は電気的に中性です。正の電荷があれば,同じ数の負の電荷があります。水中で塩酸分子はH+とClに電離します。水酸化ナトリウムはNa+とOHに電離します。水に溶かす酸とアルカリの量によって水素イオン濃度[H+]と水酸イオン濃度[OH]は何桁も変化しますが,その積[H+][OH](水のイオン積)は一定です。シリコン中でリン原子は電子を放出して自身は正に帯電します。ホウ素原子は正孔を放出して自身は負に帯電します。シリコン中の電子密度nと正孔密度pはドーピングする不純物の量によって何桁も変化しますが,その積pnは一定です。自分は何桁も変化するのに相棒との積が一定になる理由は反応速度論で説明できます。ある決まった体積の水を考えます。水の中では水素イオンと水酸イオンが結合して水分子になる反応(H++OH→H2O)と,その逆反応(H++OH←H2O)があって,平衡状態では2つの反応速度が釣り合っています。H2Oが生成される反応の速度v1は,H+とOHが出会う確率に比例するはずです。その確率はH+の数に比例し,OHの数にも比例すると考えられますから,v1= k1[H+][OH](k1は定数)と書き表せます。一方,逆反応の速度v2はH2Oの数に比例します。H+とOHの数が何桁も変わるといっても,絶対数がH2Oの数に比べて十分小さければH2Oの数に変化はありませんのでv2=一定と考えて差支えありません。したがって平衡状態ではv1=v2(一定)となりますから[H+][OH]=一定,すなわち水のイオン積は一定となります。一方,半導体では,電子と正孔が再結合して半導体結晶の共有結合になる反応と,共有結合から電子と正孔が対で発生する逆反応が釣り合っていると考えれば,水のイオン積と同じように半導体中のpn積一定が導けます。

「pH」と「キャリア密度」とだけ覚えていたのでは気が付きませんでしたが,「イオン積」と「pn積」と考えれば共通性に気がつき,その根底にある数学まで理解できるようになりました。中学,高校では専門分野を学ぶための基礎を修得します。科目によって「好き・嫌い」や「得意・不得意」はあると思いますが,嫌いなことが好きなことと深く結びついていることもあります。不得手だからといってその科目に「わからない。面白くない。役に立たない。」という烙印をポンポン押さずに勉強してみてください。きっと自分を大きく広げる何かが隠れていると思います。

pH計(マイクロコントローラのおかげで取扱いが大変楽になりました。これも集積回路のおかげです。)

電情日記

自己組織化特許マップ

小原 和博

小原(こはら)です。最近の話題を提供させていただきます。2011年3月3日に、小原研の加藤拓巳君(大学院生)が情報処理学会第73回全国大会で「学生奨励賞」を受賞しました。小原研の受賞は第70回の土井添淳一君(大学院生)に続き、3年ぶり2度目です(電情日記2009年1月7日)。今回受賞した加藤君の講演題目は「自己組織化マップによる企業別特許マップの作成」です。自己組織化マップ(SOM)はニューラルネットワークの一種で、多次元の入力データを学習して2次元マップを出力します。類似のデータが近くに配置されるのが特徴です。

特許マップとは、特許情報を特定の利用目的に応じて収集、分析し、図面、グラフ、表などで表現したものです。企業の技術開発戦略策定や、国の技術開発推進政策立案などに使用されます。技術課題と解決手段を2軸とした特許マップは効率的な特許分析を行う上で特に重要ですが、視覚的に企業間あるいは特許間の関係を把握するのは困難です。そこで、SOMを用いて特許マップを作成することにしました。2軸マップでは縦軸、横軸に明確な意味がありますが、SOMでは縦軸、横軸には意味がありません。SOMではトータルで見て類似の企業や特許が近くに配置されますので、企業間あるいは特許間の関係を視覚的に調べるのに適しています。2軸の特許マップと自己組織化特許マップを併用することで、より効果的な特許分析を行えるものと期待します。

「情報家電」と「立体映像」に関する特許を対象にして、テキストマイニング(単語頻度解析と係り受け解析)により特徴ベクトルを作成し、それをSOMに入力して特許マップを作成しました。SOMへの入力データ(行列)として、企業名を行、技術用語を列とした場合と、新たに、技術用語を行、企業名を列とした場合も調べました。これにより「技術用語をラベルとした企業別特許マップ」を作成できます(図1)。このマップを用いて、研究テーマを決定したり、企業の技術開発戦略や企業活動の方向を策定したりする事例を具体的に示しました。例えば、情報家電では「S社が、競合するP社に勝つためには、セキュリティ分野の研究開発を推進するか、当該分野で先行するY社とライセンス契約を結ぶのがよい」という方策を考えます。逆に「P社は、セキュリティや省電力関連技術などをセールスポイントとして事業展開を図るのがよい」という方策を考えます。

残念ながらスペースの都合で十分な説明ができませんでした。興味のある方、大学院進学希望の方は是非、小原研に足を運んでください。他にも、見て楽しい「人工テーマパーク」(電情日記2007年11月1日)や「テキストマイニングによるレビューサイトの分析」など面白い研究が色々とあります。一緒に研究しましょう! 5月29日(日)に芝園で開催されるオープンキャンパスで、人工テーマパークの実演を行います(8号館)。また、7月18日(月・祝)と9月19日(月・祝)に津田沼で開催されるオープンキャンパスで、自己組織化マップとレビューサイト分析の説明を行う予定です(新1号棟15階小原研)。是非、お立ち寄りください。

図1 技術用語をラベルとした企業別特許マップ(情報家電)

電情日記

就職活動と想像力

小林 幸雄

大学を卒業しても就職できない学生が増えています。一昔前に比べて大学卒の若者が増えた事、バブル時代と比較して企業に元気が無くなり多くの労働力を必要としなくなった事、等々様々な理由が考えられますが、一番の理由は近年のグローバル化にあると思われます。国際化の進展により、開発途上国から多くの外国人が日本に来て職に就くようになりました。また、日本企業は海外に進出し、現地の人達の労働力による自動車や電気製品等の生産活動を活発に進めるようになりました。

命令された事を、従順に、一生懸命働いてくれる人達は世界に大勢います。しかも、その人達は日本人よりも低賃金で働いてくれるのです。日本の大学を卒業し、高賃金で職に就くためには、開発途上国の人達には無い能力が必要になって来たのです。

その能力とは、本学の建学の精神にもある“自学自律”ではないでしょうか。すなわち、人から命令されなくても、今何をすべきかを自ら考える事ができ、そのなすべき事を実現するための様々な障壁を他人から教えられることなく自らの想像力を駆使して解決できる能力が求められているのだと思います。

大学における授業でこのような想像力を養うには、多くの問題に挑戦する事だと思います。難しい情報理論や電磁気学を勉強しても世の中に出て使わないから意味が無いなどと考えないでください。情報理論や電磁気学などの問題を数多く解く事によって想像力がしらずしらずに身に付いてくるのです。しかし、試験の準備として、先生から与えられた例題の解答を、ただ暗記して解けるようにするだけでは何の役にも立ちません。問題の本質を良く理解して、例題とは異なる応用問題に対して、ア~でもない、コ~でもないと時間をかけて苦労しながら解く事が最も重要なのです。そして、この苦労する時間こそが想像力を養ってくれるのです。

卒業研究の遂行は、自学自律や想像力を養うための最も良い機会です。卒業研究のテーマとして何を選べば良いかについて想像し、その実現のためには何を行えば良いかについて想像し、同様の研究は何処まで進んでいるかについても調べ上げ、誰に指示される事無く、自らの想像力によって研究が進められるからです。

就職試験のために、多くの就職マニュアルを読んで、その内容を丸暗記して試験に臨んでも、人生経験のある面接官は、直ぐに貴方の想像力の無さを見抜いてしまいます。卒業研究に熱心に取り組む事、そして想像力を身に付ける事こそが、就職難の時代を乗り越える最善の方法だと思います。

電情日記

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