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電情日記

重力との戦い

岡本 良夫

最近では車で遠出をしても道に迷う事はありません.目的地を指定すればカーナビが間違いなく案内してくれるからです.途中で道を間違えても直ぐに修正してくれます.こうした便利な装置が利用できるのもGPS (Global Positioning System) のおかげです.携帯電話やスマートフォンでもGPS機能を組み込んだものがあり,道案内はもちろんのこと,近所にある旨いラーメン屋などを教えてくれます.とは言え,GPSでは10m程の誤差がありますし,地下街やビルの中など,GPS衛星からの電波が届かない場所では直接には利用できません.そのため,例えばオフィスで働くスタッフそれぞれが何処にいるのかをリアルタイムで知りたい場合などには利用できません.電波が届かない可能性もありますし,届いたとしても位置の精度が十分でないからです.オフィスの各所にセンサを配置し,スタッフの動きを追跡する方法もありますが,私の研究室では「慣性測量」に注目しています.

位置が時間的に変化する割合(位置の時間微分)が速度で,速度が変化する割合(速度の時間微分)が加速度ですから,逆に加速度を測定して2回積分すれば変移(何処から何処まで移動したのか)が分かります.これが慣性測量の原理です.ただし,どの方向の加速度なのかを決めるには装置の向きを知る必要がありますので,向きが時間的に変化する割合(角度の時間微分)である角速度を測定し,それを積分することで向きを決めます.角速度センサは安価なデジカメにも組み込まれ,手振れ防止用に利用されていますし,ゲーム機の周辺装置(例えばWiiのモーションプラス)には加速度センサも搭載されています.このように,既に市場に出回っている小型で安価な加速度センサ,角速度センサを使ってポケットサイズの慣性測量装置を作り,GPSを補完するLPS (Local Positioning System) を実現しようと言う訳です.

慣性測量の原理は簡単ですが,これを実現するのは容易ではありません.最大の問題は重力です.重力は加速度と区別できませんから(これがアインシュタインの一般相対性理論の出発点なのですが),地球に対して静止していても加速度センサは重力加速度を計測してしまいます.慣性測量を実現するには重力加速度を消去しなければならず,そのためには鉛直方向,つまり重力の方向を正確に知る必要があります.例えば鉛直方向に1度の誤差があると,消去しきれずに残った重力の影響で1分後には300m以上の誤差が生じてしまいます.鉛直方向の決定精度には限度がありますから,重力の影響で生じた誤差を低減する方策が不可欠です.加速度や角速度以外の何らかの情報を利用して誤差を減らす訳ですが,どのような情報をどのように利用するのか,こうした点を中心に研究を進めています.

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