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電情日記

本に思う

伊藤 武

教育研究活動において欠かせないものの一つに本との付き合いがある.大学の私の部屋の書棚の一部をスナップ撮影した写真である.かなり雑然としている.一瞥だけの本,一回きりの本,繰り返し読んだ本,愛着のあまり捨て切れない本,僅かであるが自分が関与した本,教科書,日頃参照する本など雑多である.自宅には床補強を施した書棚がある.これの中身もまた雑然,雑多である.私の机の周りにも本が積まれている.本にはいろいろお世話になっている.感謝の気持ちを込めて,それ以上に,特に若い人達には本と付き合ってもらいたいという気持ちから,本への思いを二つほど述べたい.

ご覧の通り本は物質である.重さと大きさがあり保有することだけでも大変である.ところが,2010年は「電子書籍元年」と言われるように,本の形態が大きく変わろうとしている.本はその内容であると考える人々,内容に加えて装丁・字体・紙質など諸々が相まって物(エネルギー)を感じさせるのが本であると考える人々の双方から,紙の本は今後生き残るのか議論が賑やかである.当然それに関する本も出版されている.私は未だ定見を持ち合わせるに至っていないが,ネット社会で我々を取り囲む多くのものがそうであるように,本の形態が大きく変わることだけは確実である.重要なことは,紙の本,電子書籍それぞれに良い面を有していることである.文化を担う本の形態が劇的に変わりつつある現在,それが望まし方向に変わる,変えるためにも,今こそできるだけ多くの本に接して欲しいと思う.幅広く諸々の本に,種々の接し方で,一読,多読,乱読,精読,熟読,味読,耽読,愛読,積読,横読,座読,立読,臥読などなど.

本との出会いも楽しみの一つである.街の本屋が淘汰され大型書店が幅を利かせるようになり,書店で陳列された本を一瞥するにも相当なエネルギーが求められる.それでも書店の棚の前に立つと気持ちが沸き立つ.大学への往復,電車で過ごす時間が長いので文庫本の類に目が行く.思うのは,その充実ぶりである.古典的な学術書が日本語で文庫本化されている.私が学生であった頃,偏微分方程式が頻繁に出てくる文庫本が出版されるとは想像さえしなかった.シャノンの情報理論の原典を文庫本で電車に揺られながら読むことなど夢にすら思わなかった.学生の頃,解らない,解らないと苦読した時間を懐かしみ,その変化の大きさに打たれる.同時に,その変貌の要因,背景,影響,功罪など考える.それは,本を通して自分なりに社会,文化の変移,変質の断面を実感,体感することである.少し大げさに言うならば,本との付き合いは自分の立ち位置,自分の軸を定めるのに有効,有益と言える.継続して,好みの形で本と接することを若い人達に強く勧めたい.

電情日記

「世界初,世界一をめざそう!」再考

飯田 一博

新年おめでとうございます.電気電子情報工学科で空間音響学の研究を進めている飯田です.このブログも4巡目に入りました.今回は,本サイトが立ち上がった2007年7月の第1回ブログで書いた「世界初,世界一をめざそう!」について再考してみたいと思います.

昨年,「世界2位ではだめなのか?」という言葉が日本国中を席巻したことは記憶に新しいと思います.この考えに同意する方もいれば,異議を唱える方もいるでしょう.一般論としては,個人の価値観の問題といえなくもないと思います.例えば,オリンピックで銀メダルを獲得した選手は,それに満足するかもしれないし,それを悔しく思うかもしれません.人それぞれだと思います.

しかし,われわれの業界,つまり科学技術の研究を生業としている世界では,「世界で2位でもよい」という考え方は成り立たないのです.なぜでしょうか?

そもそも研究とは,さまざまな現象の発生理由を解明したり,これまでできなかったことを実現したりすることを目的としています.したがって,①科学的に世界で初めて発見した,あるいは,②技術的に世界一の性能や機能を実現した,のいずれかもしくは両方でなければ真の研究成果とは言えません.この理由について例をあげて考えてみましょう.

まず,①世界で2番目に発見したことに意味はあるでしょうか?ある謎の現象の仕組みを誰かが世界で初めて解き明かした瞬間に,その謎は謎ではなくなっています.つまり,研究の対象ではなくなってしまいます.みなさんもご存じの通り,ノーベル賞は世界で初めて発見した人にしか授けられません(同時期に複数の研究者が発見することはよくありますが).ノーベル賞の審査団は世界で最初に発見した研究者が誰であるのかを徹底的に調査します.これは①の意義を尊重しているからです.

では,②世界で2番目の性能の実現についてはどうでしょうか?津田沼駅前にフレンチレストランが2軒あって,片方は世界一おいしい店で,もう片方は世界で2番目においしい店だとします(もちろんフィクションです).ただし,値段は同じで,お客が何人でも入れるほどお店は広いとします.みなさんはどちらのお店で食事をするでしょうか?…天の邪鬼な私は,たまには世界2位のフレンチも食べてみたくなりますが,技術の世界では価格が同じならば,最も性能がよいものが選ばれて,他は淘汰されます.世界で2番目においしいフレンチレストランは津田沼では潰れてしまうでしょう.

このように,大学における自然科学の研究は,高校までの理科の勉強とは目指す点が全く違います.理科の勉強は,先人によって明らかにされた自然科学の現象を本や実験で身に付けていくことが目的でした.これに対して,大学における研究の目的は先人が到達していない自然科学現象の解明や技術の実現です.電気電子情報工学科では,1,2年で基礎的な学力,3,4年で専門的な知識や考え方を身に付ける教育を行ったうえで,3年生後期には研究室に配属し,4年生の卒業研究や大学院では,われわれ教授陣とともに世界初・世界一をめざした研究を進めています.

私の研究室でも,少しずつではありますが,世界初の研究成果を国内外の学会で発表しています.下の写真は, 2010年9月に大阪で開催された日本音響学会秋季研究発表会で大学院生が発表している風景です.この研究発表会では,私の研究室の大学院生2名が,それぞれの研究発表で優秀学生発表賞を受賞しました.われわれの研究活動が認められつつあり,学生ともども励みになりました.

このブログを読んでくださったみなさん,われわれと一緒に世界初・世界一をめざして研究しませんか?研究を通じて世の中をよくしようとする志しのある学生のみなさんの入学を待っています.

電情日記

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