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電情日記

共同研究者マメドフ先生とその母国

脇田和樹

今回は共同研究者の一人であるマメドフ ナジム先生や先生の母国アゼルバイジャンについて紹介します。マメドフ先生はアゼルバイジャンの科学アカデミーのメンバーであり、国立物理学研究所の副所長として勤務されています。また、アゼルバイジャン工科大学の教員も兼務されています。
現在、我々と温度により結晶構造が変化(構造相転移)し、ナノスケール領域で興味ある特徴を示すタリウム系化合物について共同研究しており、毎年、実験や議論、打ち合わせをするために研究室に来ていただいています。研究室で撮影した写真(下)の左から三人目がマメドフ先生です。

私の専門領域である多元化合物では、旧ソビエト連邦の研究機関が伝統的に高いポテンシャルをもっていたこともあり、またマメドフ先生は旧ソビエト連邦の科学アカデミーメンバーの時代から固体物理、特に分光エリプソメトリー(光学的測定の一種)による光物性の権威者であることから、共同研究により我々も多くの恩恵を受けています。

マメドフ先生が日本に来られるだけでなく、私も2005年に国際ワークショップで、また2007年には国際会議でアゼルバイジャンのバクを訪れました。
下左の写真は市内のホテルから見た町並みであり、旧ソビエト連邦時代の古い建物を解体して新たなビルが急ピッチで建設されていました。ビル街の向こうに見えるのは、世界で最も広い湖であるカスピ海です。カスピ海の特にアゼルバイジャン側で有名なのは油田とキャビアですが、最近キャビアは乱獲気味で持ち出しの規制が厳しいようです。また、写真の左に見えているスタジアムは2007年に女子レスリング世界選手権が開催され、日本勢が大活躍した場所です。

一方、上右の写真ではバク市内に12世紀に造られ、旧市街を形成している城壁が見られます。ここは、アジアとヨーロッパの交差地点で両文化の交流場所です。またアゼルバイジャンと日本は同じウラル・アルタイ語族のため日本語とアザリ語の文法が似ているようです。

実は今年の9月末にはバクで「第17回三元多元化合物国際会議」が開催されます。マメドフ先生や我々が伝統あるこの国際会議開催のために数年前から計画してやっと実現することができました。日本からは応用物理学会が協賛となり、その中の多元系機能材料研究会のメンバーが会議論文集作成の担当をします。そのため、全体の参加者として250名程度を予想していますが、その中の50名程は日本からの参加者です。私も大学院生たちと日頃の研究成果を発表する予定です。その会議の模様については、また後日報告したいと思っています。

電情日記

ハイブリッド自動車駆動用モータの開発

山崎 克巳

一昨年2月のこのコーナーでも紹介しましたが,山崎研究室では発電機やモータなどの電気機器の研究を行っています。具体的には,火力や原子力発電に用いられるタービン発電機,新幹線などの鉄道や各種産業に用いられる誘導モータ,そして電気自動車やハイブリッド自動車などに用いられる永久磁石同期モータを三本柱とし,各企業と共同で研究を進めています。最近の特に大きな成果として挙げられるのが,当研究室で発案した永久磁石モータの設計に関するアイディアが,日産自動車「フーガ」のハイブリッドシステムに採用され,この秋に発売される運びとなったことです。図1は昨年の東京モーターショーで公開された時の写真です。学会で論文が認められるのとはまた一味違い,微力ながら地球環境問題の解決に直接貢献できたと,共に開発に関わった大学院生達と一緒に喜んでいます。そこで今回は,このハイブリッド自動車用永久磁石同期モータの開発経緯に関して,わかりやすく解説しようと思います。何かのご参考になれば幸いです。

ハイブリッド自動車は,駆動源としてエンジンとモータの両方を持ち,それらの良いところを使い分けて走る自動車です。一方,車内の限られたスペースにエンジンとモータの両方を設置しなければならないため,モータは小形でハイパワーな事が必要です。そこで注目されたのが,強力な希土類ネオジム磁石を用いた永久磁石同期モータでした。ネオジム磁石は1980年代に我国で発明され,日本でいち早くハイブリッド自動車が開発・発売されるようになったきっかけの一つとなりました。現在市販されているハイブリッド自動車には,ほぼ例外なく永久磁石同期モータが用いられています。

更に小形なモータとするため,モータ内のコイルの巻き方も工夫が進んできました。図1(a)は分布巻と呼ばれ,コイルを重ねて巻く方法です。これらのコイルで発生する磁界は,モータの中を滑らかに回転し,これにつられて磁石も回転するという仕組みです。この巻き方は,ネオジム磁石が登場するずっと以前から,殆ど全ての交流モータに用いられてきており,1997年に世界で初めて市販されたハイブリッド自動車,プリウスのモータにも採用されました。しかしこの巻き方ではコイルが大周りとなり,モータのサイズが大きくなってしまうのが難点でした。これに対して,図1(b)のように磁極ごとにコイルを巻く集中巻にすると,磁界の回転は多少荒っぽくなりますが,コンパクトになるうえに,コイルの材料となる銅も節約できます。そこで従来はあまり用いられて来なかったこのような集中巻コイルが,一部のハイブリッド自動車のモータに採用されるようになってきました。

ここで大きな問題として持ち上がったのが,ネオジム磁石の熱減磁です。昨年5月のこのコーナーでも紹介しましたが,ネオジム磁石は強力な磁力を持つ半面,二つの弱点があります。一つは電流を通しやすいということ,もう一つは高温になると磁力が失われてしまうことです。コイルを集中巻にすると,分布巻に比べて磁界の回転が滑らかでなくなるため,特に高速で大出力運転時に,ファラデーの法則に従って磁石に大きな渦電流が流れ,この発熱で磁力が失われる可能性があることがわかったのです。例えば,高速道路で追い越しをかけようとすると,突然パワーが出なくなる恐れがあるということになります。同期モータは原理的な発明から既に100年以上経過していますが,この問題はネオジム磁石が発明され,ハイブリッド自動車が開発されるようになるまでは,全く未知のものでした。世界中でこれを解決する方法について研究が行われましたが,有効な解決策は唯一,磁石を細切れにして渦電流の流れをカットすることだけでした。しかしこれでは,磁石に隙間ができて磁力が弱まるうえに,生産にも手間がかかってしまいます。

そこで山崎研究室では,モータの鉄心の形状を工夫することによって渦電流を低減することができないかと考え,図2に示すように磁極や磁石の周りの鉄心の自動形状最適化計算を行ないました。これは人間の試行錯誤の過程をコンピュータが行い,人間だと何年もかかる事を数時間で行ってしまう方法です。最終的に図3に示すように,磁極をいかり形とするか,磁石の周りの回転子鉄心にへこみをつければよいことがわかりました。共同研究を行っていた日産自動車さんで試作・検証して戴いたところ,磁石の発熱量を半分以下に抑えられることが確認でき,冒頭で述べたフーガ・ハイブリッドへの採用につながりました。図1の写真の回転子鉄心に注目すると,少しわかりづらいですが,へこみが付いていることが確認できます。なお,より専門的な内容についてご興味がお有りの方は,電気学会論文誌D,2009年11月号,pp. 1022-1029に,日産自動車さんとの共著論文が掲載されていますので,ご参照下さい。ちょうど東京モーターショー2009の開催期間と同時期の論文掲載となりました。

このように,世界に先駆けて千葉工業大学の山崎研究室で集中巻永久磁石同期モータの鉄心形状最適化が行えた最大の理由として,歴代の大学院生達と一緒に開発してきたモータ用の自動形状最適化ソフトが威力を発揮したことが挙げられます。世界にはモータの研究者も形状最適化ソフトの研究者もたくさんいますが,自分達で開発したソフトを使うモータの研究者は,現在ではほとんどいません。これは,コンピュータの進歩に従ってソフトも非常に高度化・複雑化し,水平分業が進んで来たためと言えます。わかりやすく料理人に例えて言えば,包丁がいくら命の道具といっても,今では自分で鉄から叩きあげて包丁を作る料理人はまずいないと同じです。でももし,売っている包丁ではなく,料理人が自分に合った包丁を自分自身で作ったら?他のレストランには真似できない料理を作れるはず。これが私の戦略でした。たった包丁一本ですが,20年以上の気の遠くなる時間と手間がかかりました。途中で「何をやってるんだ。」「もうそんな時代じゃない。」などのご意見もありましたが,叩き始めて10年ほどたつと,市販のものにはない独特な切れ味を見せ始めました。ここまで来るとしめたもので,その後多くの企業のご支援を受け,優秀な大学院生達にも恵まれて,少しずつ包丁(ソフト)の完成度が高まってゆき,ちょうどハイブリッド自動車用モータの発展時期と重なって良い仕事ができました。これからも,我々の得意技術を生かし,微力ながら地球環境問題の解決に向けて貢献できればと,学生共々願っています。

電情日記

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