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電情日記

数学をなぜ勉強するのか?

相知 政司

電情日記に2度目の登場の相知政司(おおちまさし)です。

最近,電車の中のある広告に目がとまりました。「数学をなぜ勉強するのでしょうか?」と書かれていました。その後に,「確かに,大人になれば数学は,役に立たないかもしれませんが,論理的思考能力が役に立つのです」と小さな文字で,説明がされていました。

私は,この広告を見て,考えました。はたして,「数学は大人になると本当に役にたたないのでしょうか?」。いや,「数学は,世の中の役に立っている」と思いました。それを一般の人が,知らないか,それとも全く気にしていないだけです。では,どのような場面で数学が役に立っているのでしょうか。例えば,どのくらい生活に密着して数学が役に立っているのかを書いてみます。

朝,目が覚めて,蛍光灯のスイッチをONにします。ご飯を準備するにも,炊飯器や電磁調理器のスイッチをONにします。テレビのスイッチをONにするかも,パソコンをONにするかもですよね。ところが,電気は貯蔵することができません。発電量と消費電力は,等しくないといけません。では,どのようにして発電量を決めているのでしょうか。それは,過去の何月何日何曜日,その日は祝日か,その日の最低気温と最高気温は何度であったかの消費電力のデータが数十年間も蓄積されています。それらのデータを総合して,発電量の数学モデルを作成するのです。その数学モデルに明日の日付と曜日,予想気温,経済動向などを入力すれば,明日の発電予想量が計算できます。それに基づいて,火力発電所や水力発電所などの発電量が調整できる発電所を制御して,発電量を決めているのです。もし,発電予想量が外れれば,電力が不足して,停電になることもありますが,現在では,電力会社が相互に電力を融通することができるので,滅多なことでは発電量は不足しませんし,大停電も簡単には起こりません。

さらには,日頃,便利に使用している携帯電話ですが,なぜ,自分の声が,通話している相手に間違わずに,届くのでしょうか。自分が,「午後1時に待ち合わせですね」といった言葉が,「午後2時です」とは変化しません。それは,電波の振る舞いが数学で書き表されており,再現性があるからです。数式に当てはまる現象は,同じ条件であれば,同じように振る舞います。つまり再現性があるのです。この再現性を用いれば,通話している音声が途中で異なる音声に変化することはありません。

ちなみに,電波には,電界成分と磁界成分があり,その関係を数式で示したのが,Maxwell(マクスウェル)です。Maxwellは数式だけを見て,当時まだ発見されていなかった電磁波の存在を予見したのです。Maxwell方程式と呼ばれる式は,下記の四つの式であり,この四つの式で電磁波の振る舞いは表現できます。

また,天気予想をチェックしても,天気予報は雲の動きや風などの動きを微分方程式(運動方程式)にしてモデル化し,その式を解くことで,数時間後の雲の位置・状態を予測して,天気予報を出しているのです。しかし,カオス的に言えば,微分方程式を解く場合には,初期値鋭敏性があり,最初の値が若干,ほんの少しだけ,異なるだけで,数日後の状態は,大きく変わると言われています。このカオス理論も数学の世界で議論されることが多いのです。

雲は,なぜ,落ちてこないの? この答えを最近読んだ本が数式で説明してくれました。レイノルズ数 (Reynolds number)が関係しているそうです。レイノルズ数は知ってましたよ,でも,雲が落ちてこない理由の説明に使うなんて新鮮でした。遠い子供の頃の疑問が,数式で説明された時って,感動ですよね。ただし,雲に乗れるかどうかを数式で説明しているのを見たことがないので,まだ,感動は半分ですが。

この電情日記を読んでおられる方も,きっと日常生活の中で,数学のお世話になっているはずです。しかし,それを気づいていないだけです。大学の理工系の学科に入学すると1年や2年次には,専門科目より,数学や英語の授業が多くあります。しかし,それは,専門科目につながる大事な科目です。また,数学や英語は,スポーツで言えば基礎体力を強化するようなトレーニングの意味もあります。基礎がしっかりしたスポーツ選手は,他の種目でも世界で戦えることがあります。昔,アイススケートのオリンピック選手が,夏のオリンピックにも競輪の選手として出場したことがありました。基礎体力がしっかり身についていれば,応用が利くのです。工学の分野では,数学を研究対象にする場合もありますが,多くの場合,基礎知識として数学が大事です。将来の技術者を目指す若者には,数学をしっかり勉強して,大学での専門科目で数学がいかに実生活に役立っているのか,勉強して欲しいと思います。

以上,長くなりましたが,これで二回目の電情日記を終わりにしたいと思います。

電情日記

本についての思い出

伊藤 晴雄

図書館が津田沼校舎の本館3階にあった頃の話。書庫の隅の棚に青っぽい灰色をした布製の表紙の本が3冊程、少しくたびれた形で揃って並んでいるのに気が付いた。

あまり開いたことがないように見えたその中の1冊を取り出して開いてみると、20世紀初頭、かの量子論を唱えたマックス・プランクの「理論物理学汎論」であった。そういう本があったことも知らなかったが、手にした本から古本独特の臭いがした。

表紙をめくり2ページ目辺りに、プランクの横顔の写真が載っていた。今よく見ることができるのは髭をはやし、細ぶちの眼鏡をかけ、斜め前を見たいかにも思慮深い容貌の写真であるが、その本では若い頃のものか、髪の毛も沢山ある珍しい写真であった。裏のページにこの本の訳者が寄せた文があった。旧かな使いの文語調で書かれていたその内容は「あの偉大なプランク教授の円熟した筆により著された本を訳す機会を得た事を嬉しく思う。しかし、この訳本が名著の権威にそぐわないのではないかと恐れている。」とあった。結びの謙虚な文が心に残った。訳者の名は「寺沢寛一」。その名は学生時代に読んだことのある数学や物理の本の中で参考書としてよく挙げられていた「自然科学者のための数学概論」の著者であることは知っていた。

それは又、これより数年前に中央公論社から「自然」という科学雑誌が出版されていて、ある時期「わが師、わが友」というシリーズものが組まれ、第一線で活躍されている先生方の随筆がのっていた。これらは後になってみすず書房から同名の2冊の単行本として出版されたが、この中の当時電気工学、数学、物理学の立派に仕事をされた先生方の文の中に「寺寛の数学で勉強した」、「あの本はなかなか難しくて読むのに苦労した」とか、本の話ではなく「部屋を訪ねて就職の世話をしてもらった」という今日でもあるような話が出て来て、少ないながらその本と人の名は頭の中にあった。

そういえば、大学院時代の終わり頃、指導教授から何か言われながらその「自然科学…」の本を頂戴したことも思い出した。

このようなことでその名前を知っていた「寺沢寛一先生」が、本学2代目の学長、その方であったと分かったのはもう少し後のことであった。あの本を渡してくれた恩師はそのことを知っていたのだろうか? 図書館にあったあのプランクの古い本はどこに行ったのだろうか? 今遠い昔を思い出している。

電情日記

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