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電情日記

チャールズ・カオ博士

伊藤 武

画質が芳しくないが思い出の1枚の写真です。写真の右端がチャールズ・カオ博士です。左側の2人は私の知人です。もう20年近くも前の1981年4月末、米国サンフランシスコで開催された光ファイバー通信に関わる国際会議の展示会場での一瞬です。

今年もノーベルの命日である12月10日にノーベル賞の授賞式が挙行される。物理学賞受賞者の一人が写真のチャールズ・カオ博士です。受賞理由は「光通信を目的としたファイバー内光伝達に関する画期的業績」です。博士の受賞対象となった業績に関わる初期の論文(以降、簡単に“論文”と略記する)は1966年、英国電気学会論文誌上に発表されているので、受賞までに要した時間は40年余です。

私は学生時代に電波天文を齧っていたが、1967年に社会に出てからは一貫して光通信の研究開発と教育の世界に身を置いている。光ファイバー通信が、文字通り、昇龍の勢いで立ち上がる時期に、その勢いに寄り添うように仕事が出来た訳で大変恵まれていて幸運なことです。その一時期にカオ博士とめぐり会う時間を持てたことも幸運なことの一つです。それほど深い直接的な関わりがあったわけではないが身近に感じられる人のノーベル賞受賞は大変嬉しいものです。

カオ博士は「時の人」なので、経歴、業績、家系、現況などは既に詳しく紹介されているネット情報などにまかせ、私の極めて個人的な思いを述べ、遠くからではあるが博士の受賞に祝意を表したいと思います。カオ博士の“論文”の内容は、非常に乱暴に要約すると、ガラスを材料とする光ファイバーの損失は不純物を除くことで大幅に低減できることを示唆し、導波理論から製造に関わる広範な観点に立った考察に基づき、画期的な通信システムの可能性を提言したものです。博士の非凡な点は、当時の常識からすると桁を越えての低損失伝送路の可能性を明示した点に止まらず、日米欧の先進諸国の通信研究開発組織や製造会社などを直接訪問し、低損失光ファイバー開発の魅力を啓蒙した点です。事実、それを契機として、1970年、米国のコーニング社を皮切りに日米欧の多くの機関により低損失石英系光ファイバーが実現された。光ファイバー通信システムが現在の情報化社会を支えていることは周知の事実です。

柳の下の泥鰌を狙った訳ではないと思うが、その後、多成分ガラスで更に低損失光ファイバーが可能との論文が発表され、関連する研究者や技術者の仲間内で一時大変な話題になった。しかし、実現されるに至っていない。単なる机上の試算になるか、革新の引き金になるかの間には、研究者の感、先見性、あるいは、センス、更には、開発に向けての強い動機づけの努力が大きくものを言うように思われる。カオ博士の紳士的な所作、温厚な話しぶりの裏には強い自信と信念があったのだと今更ながら思いを致す訳です。

私の身近から、更に、あるいは、将来、自信と信念の人が多く現れることを望んでいる。

以上

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