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電情日記

念力の実現

岡本 良夫

念力やテレキネシスと言うと眉唾のテレビ番組のようですが、「考えただけでモノを動かす」ことに何の不思議もありません。実際、手を上げようと「考える」だけで手は上がるのですから。手を上げようと「考える」と、脳は関係する種々の筋に指令を出し、それぞれの筋が指令に応ずることで手が上がる訳です。自分の手ですから自在に動いても驚きませんが、脳からの指令を読み取り、それを使って例えばクレーンを制御したらどうでしょう。何十トンものコンテナを「考える」だけで動かせることになります。脳からの指令でロボットを動かすことも可能でしょう。本人はベッドで横になりながら、身代わりのロボットを自身の体のように操るのです。ロボット搭載のカメラやマイクロホンからの画像や音声がリアルタイムで提示されれば臨場感も十分でしょう。寝たきりの人でもロボットの体を借りて山登りが満喫できるかも知れません。

こうした技術を実現する上での最大の問題は「脳の指令をどのようにして読み取るか」ということです。脳を構成する数百億個のニューロン(神経細胞)は電気信号を使って情報交換していますし、脳からの指令も電気的なパルスとしての身体中の筋に伝わりますから、脳や神経に電極を挿し込んで電気信号を直接に測定するという方法が考えられます。実際、サルの脳(1次運動野と呼ばれる領域)に100本の電極を埋め込んでニューロンに接続し、得られた電気信号を使ってロボットアームを動かす、という実験が行われました。訓練を繰り返すうちに、サルは目の前の果物をロボットアームでつかんで食べるようになったとのことです。最近では重度の運動障害を持つ患者に同様の電極を埋め込む試みもあって、「考える」だけでテレビのチャネルを変えたり、パソコンでメールを書いたりしているようです。ここまで来ると「念力」と言っても良いのではないでしょうか。

とは言え、少なくとも現状では健康なヒトの脳に電極を挿し込むことには躊躇せざるを得ません。電極を挿さずに同じようなことはできないでしょうか。実はできるのです。ニューロンが電気信号を発すると脳の内部には弱い電流が流れ、それが頭皮上で微弱な電位差として測定できます。いわゆる脳波です。脳波は脳の活動を反映する訳ですから、適切な解析をすることで「脳からの指令」が読み取れる筈です。もちろん、脳に直接に電極を挿し込んだ場合に比べれば指令の読み取り精度は悪くなりますが、パソコンに文字を入力する程度の事に困難はないでしょう。更に技術が進めば身代わりロボットを操ることも夢ではありません。私の研究室でも独自の手法で脳波を解析することで「念力の実現」にアプローチしています。

電情日記

温故知新

伊藤 晴雄

放電プラズマの特徴を手短に言えば、電気を通し、光り、化学反応を起こす、と説明しています。今回はこのうちの“光る”話をします。

何年か前、 院生の一人が新しく実験装置を組立てるための資材を揃えたいと言うので、郊外の大型店に買物に出かけました。購入する物は既に打合せてあったのでそちらは一切任せ、私は何か実験に使えそうな面白いものはないか、と興味を抱きながら並んでいる品物を見て歩くことにしました。そうしたら、ありました。エジソンが発明した白熱電球のレプリカです。思わず手を伸ばして買物カゴに入れたのは勿論です。このフィラメント、色々試したが良いものがなく、京都の近郊に生えていた竹を細く引き、蒸し焼きにして使ったところ成功した、という有名な話があったことを思い出しながら、改めてその辺を見回すと「面白そうなもの、あるある!」今日の白熱電球、ボール形をした蛍光灯、白色発光ダイオードを用いた電球、ハロゲンランプ等々。明るく照らす様々な電球のオンパレードでした。一瞬、これで光源にまつわる歴史を語ることができる、と閃き(?)ました。帰ってきて一枚の板の上に電球のソケットとスイッチを取り付け、買い揃えた電球を古い順に差込み点灯させていたところに当時4年生だった斎藤恭輝君がやって来て「面白い」と言ってくれました。それがきっかけとなり、一緒に歴史を調べることにしました。

エジソンが白熱電球を発明したのは1878年、同じ年に直流発電機も発明しています。更に1881年にはナイアガラの滝のそばに発電所を建設し、ここで作った電気で夜を明るくすることに成功した、と記録に残されています。興味深いのは、蛍光灯もエジソンによって発明されていたことです。1896年のことでしたが、なぜか彼はそのままにしていたのを1938年にインマンがより明るいものに改良し注目されました。白熱電球の発明から既に40年経っていました。結局この間、放っておかれたこともありますが、新しい蛍光体を探し出す為には必要であったと言うことでしょう。その後これらの白熱電球と蛍光灯の性能は共に向上して、今日の代表的な照明用光源に成長しました。今年、2008年は長い歴史をもち、われわれに身近な存在であった白熱電球の製造から日本のメーカーは撤退することを決めた歴史的な年となりました。そう思って今、エジソン電球を改めて点灯してみると、赤みを帯びて輝くフィラメントからの柔らかい光が一層暖かく感じます。

ところで蛍光灯ですが、あの光る色はガラスの内面に塗った蛍光体の種類により決まります。赤、青、緑、白、等々。そこで平らなパネル上の1mm四方の中に3~4本の超小型の蛍光灯を敷き詰め、これら何十万個の蛍光灯をエレクトロニクス技術によりタイミングよく点灯させてカラーの動画としてみせるのがプラズマテレビです。画像用光源と言いますが、ここでは液晶テレビも健闘しています。この構造は液晶ディスプレイと全く同じ。ディスプレイと言えば、電磁気現象を利用し最先端の高度な技術と人間の英知でくみ上げた最高傑作品とも言えるコンピュータや携帯電話になくてはならないものです。これを表示用光源と呼びます。液晶のあとには有機EL(エレクトロルミネッセンス)が猛烈な勢いで追い上げています。これら画像用ならびに表示用光源の日本の技術レベルは高く、是非ともこの調子で発展して行って欲しい分野です。

ところで好奇心旺盛なエジソンは、白熱電球の中に1枚の小さな電極を取り付け、これに電流が流れていることを実験で確かめ「エジソン効果」を発見します。これもそのまま放置されていたようですが、やがてフレミングの目にとまり1904年の2極真空管、更に1906年のド・フォレストによる3極真空管の発明へつながり、通信工学、電子工学の発展を促します。それらは第2次世界大戦中に発明されたダイオード、トランジスタなどの半導体素子に置き換えられ、電子回路の小型化に寄与すると共に、集積回路製造技術の醸成を経て62ギガビット級の大容量メモリ製造を完成し、コンピュータに使われています。情報化時代と呼ばれている21世紀の今日、エジソン以来、このような非常にダイナミックな技術の展開を経て今日に至っているのです。これらに参加した研究者、技術者は国境の区別なく、電気電子情報工学を学ぶわれわれの先輩に当たります。それと共に、新しい発明や発見がわれわれの生活に役立つものに完成するまでのどこかで、必ず新しい材料の開発という困難な仕事を打破(breakthrough)して成功に導いた事実が数多くあったことも、もっと良く知っておくべきでしょう。古きをたずねて新きを知る、です。

そうそう、学生と一緒に作った各種光源の見本とパワーポイントにまとめた歴史物語はオープンキャンパスや高校での出前講義で使っています。一報頂ければ伺います。電気電子情報工学の世界には、このような面白いことが数多くあります。(本文は、下のイラストも含め、斎藤恭輝君の卒業論文をベースにしてまとめました)

電情日記

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