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電情日記

化合物材料とレーザー光学物性

脇田 和樹

化合物の主に光物性とデバイス応用について研究している脇田です。

まずは私が研究のターゲットにしている化合物についてお話します。半導体の分野で主役のシリコンはシリコン原子のみによる単原子半導体です。一方、異なる幾つかの元素で構成された化合物の特徴は、希望する性質をもった材料を設計する場合の自由度が大きく、また単体それぞれの材料からは予想できない性質が発現することです。しかも化合物の種類は無限大に存在し、そのほとんどはまだ十分に研究されていません。この様なことから化合物材料は未来の新奇なデバイスや高効率エネルギー変換素子などを担う材料の宝庫です。研究テーマの一つであるTlInSe2は非常に大きな熱電特性をもち、将来の高効率熱電変換素子の材料としての候補でもあります。

さらに化合物のナノ構造体も研究の対象としています。図1は研究室で作製した直径30nmから300nmのCuInS2ナノワイヤーです。ナノ構造体では電子がナノ領域に閉じ込められることにより通常のバルク結晶では現われない現象(量子サイズ効果)が出現します。この様な現象は物理的に興味あるだけでなく、デバイスへの応用も期待できます。

次に化合物やそのナノ構造体の評価方法として、今回はピコ秒時間分解発光測定についてお話します。測定方法を簡単に説明するとピコ(10-12)秒オーダーまたはそれ以下の時間幅をもつパルス光を測定試料に照射し、そこからの発光を観測します。図2に薄膜太陽電池の材料として期待されているCuInS2の測定結果を示します。横軸は波長で縦軸が時間減衰を示す時間軸です。画像の濃い部分が強く発光していることを表しています。4つの発光がピコ(10-12)秒からナノ(10-9)秒の領域でそれぞれ減衰していることがわかります。ここで1ピコ秒とはどれぐらいの時間でしょう。1ピコ秒は10-12秒すなわち一兆分の1秒です。光は1秒で地球を7周り半します。この距離は約30万キロメートルです。その光が1ピコ秒ではわずか0.3mmしか進むことができません。この様な非常に速い領域の現象を観測することにより、その物質の性質を探ったり、光照射によって発生した電子のゆくえについて研究します。

自分自身で様々な材料を作製することや、その材料の新しい現象そしてそれが起こる機構などを見つけることは楽しいことです。皆さんも体験してみてください。

電情日記

地球環境問題に貢献する我が国のモータ技術 -山崎研究室の取り組み-

山崎 克巳

図1は最近の世界における発電量を示しています。ダントツのトップは依然米国ですが,近年目覚しい経済発展を遂げた中国が我が国を追い抜いて第2位,更には今後米国をも追い抜く事が予想されています。また我が国の後には,やはり急速に工業化しつつあるインドや,再び超大国に返り咲かんとするロシアなどが迫ってきています。今,世界はますます膨大なエネルギーを消費しようとしている状況にあることが分かります。

このように膨大な電力は何に使われているのか。実は多くの国で,発電されている電力の半分以上がモータで消費されていると報告されています。モータは在来線や新幹線などの鉄道車両,工場の生産設備,家庭ではエアコンや冷蔵庫のコンプレッサ,ハイブリッド自動車など,至るところで使われています。そんな中,一つ注目していただきたいのが,日本と米国の発電量データの比較です。日本の人口は米国の半分弱ですが,発電量は米国の1/4です。つまり日本人はアメリカ人の半分しか電力を使っておらず,我が国がいかに省エネルギー国家であるかが伺われます。

我が国のモータ技術は,世界トップレベルといって過言ではないでしょう。ところが,世の中ではあまり知られていない事が多く,電気電子情報工学を専門とされる方でも,少し分野が違うと「モータで新しくやる事があるのか」というご意見をよく拝聴することがあります。確かにモータ自体は発明されて既に100年以上経過していますが,近年の材料やモータドライブ回路,および設計技術の革新に伴って,新構造のモータが数多く開発されてきています。例えば我が国では,モータに使う強力な希土類永久磁石が発明され,現在数社で世界市場をほぼ独占しています。また,弱電のメモリ用半導体こそ,一度は韓国に完敗しましたが,モータドライブ回路に使うパワー半導体では日本の競争力が圧倒的で,IGBTなどが開発されました。更にモータの鉄心用の電磁鋼板に関しても,日本の製鉄メーカの技術力の高さは,経済紙などでよく知られているところです。少し前には,海外の巨大製鉄メーカが一気に買収を仕掛けるのではないかと,話題になった事がありました。

つまりモータは,我が国が得意とする要素技術の結晶であるといえます。このような背景から,国内の大手電機メーカ,自動車メーカでも,モータ技術を中核とした開発部署を拡大再編するところが出てきています。日立製作所のモータイノベーションセンタなどが有名です。

高性能なモータを開発する上で,もう一つ重要な要素が,コンピュータによるシミュレーション技術です。従来は試作による試行錯誤で開発していましたが,近年のコンピュータの飛躍的性能向上に伴って,モータの電磁界を高精度に解析できるようになり,従来未解明であった多くの現象が明らかになってきました。更にコンピュータ内で形状を様々に変化させて,最適なモータ形状を自動的に得る事ができるようになりつつあります。

千葉工業大学の山崎研究室では,電機メーカ,自動車メーカ,および材料メーカと連携して,このようなコンピュータによる電磁界シミュレーション技術を生かし,モータ等の研究開発を行っています。以下,それぞれ既に公開された範囲でご紹介します。

電機メーカでは,まず日立製作所とタービン発電機の高性能化に関する共同研究を行っています。タービン発電機は,火力や原子力発電所で用いられる発電機で,全世界の電力のかなりの部分をまかなっています。この発電機の共同研究に対して, ICEM(国際電気機器会議)より,2006年度最優秀発表賞を受賞しました。また安川電機とは,高速誘導モータの高効率化に関する共同研究を行っています。誘導モータは鉄道車両や生産設備など,現在最も多く用いられている電動機です。

自動車メーカでは,日産自動車と電気自動車用モータの共同研究開発を行っています。最近のガソリン価格の高騰から,今後ますます燃費の高いハイブリッド車や,排ガスの全く出ない電気自動車への移行が加速してゆくと予想されますが,これらの駆動用モータに要求される性能は極めて高く,ここでも日本の各社の技術が独走していることは良く知られています。図2は,損失が低減するモータ形状をコンピュータによる自動最適化計算によって決定し,実機の試作によってその効果を実証した例を示しています。この成果により,電気学会から産業応用部門第20回記念論文賞を受賞しました。また,この新型モータは,千葉工業大学と日産自動車の共同で特許出願中になっています。

材料メーカでは,先ほどの日立製作所と共に,新日鐵と電磁鋼板の損失に関する共同研究を行っています,またTDKと希土類永久磁石の損失低減に関する研究を行っています。希土類金属元素はレアメタルの仲間で,地球上にほんの少ししか存在しませんが,磁石の特性向上にはどうしても必要な物質です。現状では中国に生産を依存し,近年の生産調整で猛烈に価格が高騰しています。特に熱減磁を防ぐジスプロシウムが重要で,手に入りづらくなった場合を考えると,磁石の損失を低減するようなモータの開発が急務といえます。

また変わったところでは,今はもう終了していますが,韓国のLG電子とエアコン用モータの共同研究を行っていました。日本ではあまり知名度はありませんが,LG電子は韓国では三星電子(サムソン)に次ぐ電機メーカです。ある日突然「共同研究がしたい。今度韓国で講演して欲しい」と連絡があり,数日後にはもう韓国から使者が訪れました。研究室の学生ともども驚いたのですが,熱意に打たれ,韓国での講演を承諾しました。釜山近くの事業所に行ってみると,広大な敷地に数千人の従業員が働いており,研究所は若い技術者であふれ,活気に満ちていました。皆流暢な英語を操り,私に積極的に話しかけてきます。聞けば社内の文書も全て英語で作成しているとの事でした。丁度日韓ワールドカップ共催やヨン様ブームなど,日韓友好ムードが絶頂の頃で,大変な歓迎を受けました。私も二国の友好に微力ながら貢献せんと,講演に力が入った事を覚えています。

ところが何年かして,国際会議で韓国の方からお聞きして驚いたのですが,今はあの事業所は閉鎖されたとの事。高級品の日本と汎用品の中国の間に挟まれてシェアが伸びなかったのか,すぐさま別の事業にシフトしたようです。あのときの晩にご馳走になった,近海でとれたてのヒラメをその場でさばいた刺身は,実にうまかったのですが,また食べたいと思っても,つわものどもが夢の後という感じです。

それにしても賞賛すべきは,彼らの知識に対する貪欲さ,そして決断力の速さと実行力。半導体開発競争で日本に圧勝してきたのもうなずけます。ただし,だからといって我々がこれをそのまま真似するのは大変危険です。我々は何が得意で,何が不得意なのか,戦略的に分析する必要があると思います。千年以上にわたって天皇を護り,継続的に文化を育んできた我が国の歴史は,これからも他国にない強みを生み続けると確信しています。英語教育も大事ですが,肝心の技術の魂を伝える時間が削られるようでは本末転倒。中韓の勢いや,アングロサクソンのシステムに翻弄されず,良いところだけを取り入れて,どっしりと腰を構えて行きたいものです。周回遅れになった挙句に,他国の猿真似を行うようでは,我々はもう持たないところまで来ています。

さて,このように私どもの研究室が,多くの企業とお付き合いさせていただいている理由は二つあると考えています。一つは私どもの研究室で,世界に先駆けてモータ設計に好適な高速高精度電磁界解析ソフトを開発したことです。現在,米国,欧州,および日本の約10社から,電磁界解析ソフトが市販されていますが,私どものソフトは,ドライブ回路の影響の考慮,材料の損失算定技術,形状自動最適化に必要な要素分割技術など,モータの電磁界解析を行う上でのオリジナルな利点を持っています。20年間,コツコツとやってきた事が花開きました。

もう一つの理由は,我が国の企業ではこれほど盛んで,世界トップレベルの技術を維持しているにも関わらず,国内の大学でモータ関係の研究室がどんどん少なくなっている事です。その結果,メーカではこの分野における若手技術者の不足が深刻化してきています。

この原因は,冒頭でも少し述べましたが,モータ技術に対する誤解も一因ではないかと考えています。我々はもっとPRしなくてはいけないのではないか,そのように思い,今回の機会をお借りして色々述べさせていただきました。今後環境問題は益々深刻化してゆくことは必至です。現在私どもの研究室では,学生も企業との共同研究を担当,責任感とやりがい,そして誇りをもって研究に向かい,ここのところ毎年誰かが各学会で論文発表賞を受賞するなど,活発に活動を行っています。しかし少子化の中,今後とも同様に続けてゆけるのか,一抹の不安も否めません。これからもより多くの若い皆さんにこの分野に飛び込んでいただき,明日の日本を,そして世界を支えていただきたいと願って止みません。

電情日記

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